ジル・セティナ教授の心配は当座の生活費にも及ぶ。
銀行預金やMMFに預けておくと、一般的には長期で実質リターンを上げることができない。
セティナ教授は、手許に持っておくべき流動性についてもインフレを心配し、もう1つの手段を推奨した。
米シリーズI貯蓄債券プログラム(通商「Iボンド」)である。
- 発行者: 米財務省
- 利率: 固定金利 + 2x半年分のインフレ率 + 固定金利x半年分のインフレ率
- 変動: 元本保証。デフレ時でも利率は最低0%
- 購入限度額: 1人年10千ドル
- 保有期間: 12か月間は換金不可。5年未満の換金では直近3か月分の金利が差し引かれる
- 期限: 最長30年間
- 税金: 連邦税は換金時まで繰り延べ。州税・地方税は非課税
ちなみに今年5-10月の利率は
固定金利:0.900%
インフレ部分:3.340%
であり、出来上がりは
0.009 + 2×0.0167 + 0.009×0.0167 = 4.26%
最近の米MMFが3%台後半だったのと比べると優位性があることがわかる。
一方、実質利回りは約0.9%であるので物価連動債には及ばない。
ただし、物価連動債を償還期限前に売却する場合には価格変動リスクがあるが、Iボンドは元本保証だ。
金額規模は、毎年の限度額こそ日本のNISAより少ないが、累積ならはるかに大きくなる。
日本のiDeCoと比べると年額でも上回っている。
日本のかつてのマル優・マル特と比べても累積ではるかに大きくなる。
セティナ教授が注目するのは税金面でのメリットだ。
メリットは、償還まで税金がかからないことだ。…
実質的に税金を繰り延べ、インフレを超える実質利回りを得ることができる。…
MMFのような商品の1つの課題は、一般的に実質リターンを得られないことに加え、名目リターンに対し課税されることだ。
インフレ・ヘッジに役立つと思われた商品でも、こまめに課税されてしまえば、インフレ・ヘッジには届かなくなってしまう。
日本では国債購入をNISAに入れろなどという小さな話ばかりする政治家が多い。
本当に国民に国債を買わせたいなら、Iボンドぐらいのことを提案すべきではないか。
(ちなみに現状、米国では物価連動債を個人が買えるが、日本ではETF等を通さないと買えない。)
政府としてはもちろん所得税やインフレ税が減ってしまうのだろうが、国民にボロボロの政府のリスクを取ってもらうのだから相応のリターンの提供が必要だろう。
規模が大きく格差を助長するとの批判もあろうが、相続税での控除を許すよりはマシなのではないか。
蛇足になるが、物価連動債については債券投資についての理解を深めた上での検討をお勧めしたい。
(参考: 一部でバズっている物価連動債、みんな本当に理解しているの?)
債券の商品性やリスクをヘッジすることの意味を十分に理解しないと、思わぬ落とし穴にはまりかねないためだ。
その点でもIボンドとは無垢な投資家にとって優しい商品と言えるだろう。
