アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、投資における2つの信条を語っている。
「投資における最大の問題とは、大きな間違いを犯したのにそれを認めないことだ。
投資の本質として、投資家は多くの間違いを犯す。
問題になるのは、間違えた時に固執して倍賭け、3倍賭け、4倍賭けすることだ。」
ダモダラン教授がExcess Returnsで投資における信条を尋ねられて答えた。
これは2つの答えの1つ目だ。
投資において間違いは付き物であり、それ自体が問題なのではなく、それを認めない姿勢こそが問題だという。
投資には謙虚さ、冷静さが必要という趣旨である。
教授は、これが多くの賛同を得うる話であると考えている。
もう少し重要で見過ごされがちなのが2つ目の答え。
過去のリターンがアクティブ投資家としての成功の是非を示す証拠というのはほとんど説得力がない。
私は、そうでなく幸運や標準誤差が大きく効いているのを知っている。
ダモダラン教授は、ある書籍が示したバスケットボールと投資における優秀なプレーヤーの違いを紹介する。
「バスケットボール選手は幸運だけで3ポイントシュートを20回中15回決めることはできない。・・・
でも、投資家は幸運なら20年を通して15年で市場を打ち負かすことができる。」
問題は運と確率だけの話ではない。
ダモダラン教授は、過去のデータによるバックテストで有効性を確認したからといって、その戦略が良い結果を生むとは限らないという。
「投資戦略には、ほとんどの時期に勝てるものが存在する。
しかし、負けた時には10年分のリターンを失ってしまう。」
ダモダラン教授は、端的な例としてアウトオブマネーのコールオプションを売る戦略を挙げた。
オプションプレミアムを受け取れる一方、アウトオブマネーだから滅多にペイアウトが発生しない。
それでも、いくつかの株価が大きく上昇すれば、全体として赤字になってしまう。
過去のトラックレコードや、市場に勝ってきたと主張する投資家には注意しろ。
幸運の要素を差し引くのは本当に難しいからだ。
このメッセージは金融業界・SNS等に溢れる怪しげな運用者・識者・金融商品に注意しろということだろう。
しかし、株高の現在では別の観点からも重要かもしれない。
過去17年ほど基本的に上げてきた市場環境でうまく行ったからといって天狗になるべきでない、という観点だ。
長く続く強気相場では、高ベータ銘柄を選好したりレバレッジをかけたりするだけで市場をアウトパフォームしうる。
結果論ではアウトパフォームだろうが、それも単なる確率現象にすぎなかったのかもしれない。
こうした考えを忘れなければ、それはそのままダモダラン教授が1つ目に挙げた謙虚さ、冷静さの話に返って来るのだ。
