アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、今日も毒舌を吐きまくっている。
教授は《バリュエーション学長》とも称され、未公開企業・グロース銘柄の価値評価も積極的に行い、結果を公表してきた。
自らに誤りがあれば認める人たちによって経営される企業を正しく選択すること。
そして、投資家本人も多くの割合で間違えるというファクトを受け入れること。
ダモダラン教授がFixed + Floatingで、投資における謙虚さについて説いた。
ベンチャー/グロース企業やベンチャーキャピタル、グロース投資家にありがちな「過信」を避けるべきとの教えだ。
一例として、教授は今月上場したSpaceXの目論見書に触れた。
「もしもAIが道具であるのなら、AI市場はAIが人間と入れ替わる部分よりはるかにはるかに小さくなる。
全体で見て、昨年の世界の全上場企業の売上の合計は142兆ドル、人件費は20-25兆ドル。
(SpaceXが主張した潜在市場)26兆ドルを私がフィクションと言う理由は、仮に最終的にディストピアとなり、全労働者がAIエージェントに置き換わっても、最大25兆ドルにしかならない点だ。
AIの方が安くなるのだろうから(潜在市場は)それより小さくなる。」
仮にAIが既存事業を効率化するにすぎないなら、SpaceXによる潜在市場規模は過大という指摘だ。
もちろん、AIが新たな事業分野自体を創出するというなら別だが、その可能性については教授は明言していない。
(もっとも、まだ提起もされていない可能性まで言い出したら切りがない。)
このポッドキャストで興味深いのは、インタビュワーがクレジット市場を対象とするメディアである点だ。
いつもは株式の話題が多いダモダラン教授だが、今回は企業の負債についての話題も多かった。
結果、今回のポッドキャストは企業財務全体を俯瞰する内容になっている。
ダモダラン教授は、プライベートクレジット業界について強い危機感を示している。
ヘッジファンド業界、プライベートエクイティ業界を例に、市場規模が拡大するにつれ規律が緩み、投資のアルファが低下しマイナスに陥ったと指摘し、プライベートクレジットも同じ道を歩みつつあると予想した。
プライベートクレジットは、まさに大打撃を受けつつある。
プライベートクレジットの危うさは、他のファンドを道連れにしうることだ。・・・
これは貸出ビジネスに共通のことで、大きくなりすぎると社会的コストを生み出す。
ダモダラン教授は、株式の世界なら個々のファンドや個々の投資先の成功・失敗の話で済むが、貸出の世界では伝染しうるという。
その理由は、フィクストインカム特有の特徴にある。
「大きな市場錯覚の修正が起こった時に最大の敗者になると私が心配しているのは株式投資家・AI企業・大手テック企業ではなくプライベートクレジットだ。
彼らはアップサイドが得られない。」
株式投資にはダウンサイドだけでなくアップサイドもあるため、多くの投資の失敗があっても、それを少数の投資の大成功で補って余りあるシナリオも描きうる。
しかし、アップサイドのないフィクストインカムではそのシナリオは描けない。
フィクストインカムは基本的に減点法の世界だ。
ダモダラン教授は「グロース企業がお金を借りることが理解できない」と斬って捨てる。
債務での調達は貸し手・借り手の双方にとってよくないと説明する:
- 貸し手: アップサイドなく高リスク
- 借り手: 資金繰りの不安を高める
ところが、現実にはグロース企業が債務で資金調達する例は枚挙に暇がない。
創業者ら主要株主が支配権等の希薄化を嫌うためだ。
そして、こうした債務調達のニーズに応じる貸し手が現に多く存在する。
ダモダラン教授はこうした貸し手に対し「みんな株式のナラティブに基づいてお金を貸している」と誤りを指摘する。
教授は、ある質問とそれに対する教授の回答を紹介した。
「今朝ある人からこういうメールをもらった:
『SpaceXは資本構成上債務が少ない。
同社はもっと借入れを増やすべきか?』
私の回答は
『気が違ったのか?
現状25億ドルの赤字の会社に対し、正気でお金を貸す人がいるか?』
時価総額が数兆ドルだろうが関係ない。
貸出にアップサイドはないんだから。」
そもそもの話、ベンチャー企業など急成長過程にある企業に対するファイナンスは株式で行うべきというのが基本中の基本だ。
AIのような圧倒的なナラティブは、そんな基本さえ忘れさせてしまうようだ。
ダモダラン教授はAI関連分野について、次のように見通している。
AIが約束していることが実現した場合でも、この分野で誰が儲けるかについては2-3年、もっと長い間カオスな状態が続くだろう。
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