アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、いつものように最先端を行くIPO銘柄、今回はAnthropicの価値評価に挑んでいる。
「…私は、Anthropicの売上高が10年のうちに1兆ドルに届くことは十分にありうると信じている。」
ダモダラン教授が自身のブログで、Anthropicの価値評価に臨んだ。
重要な入力値について幅広い可能性を検討し、その中からメインシナリオを選定している。
(ちなみに、現在の米企業で売上高トップはAmazonとWalmartの0.70-0.75兆ドル規模である。)
ダモダラン教授の選定したメインシナリオは以下のとおり:
- 売上高: 2036年までに1兆ドル
- 再投資: 売上高が3ドル増えるごとに1ドルの再投資が必要
- 破綻確率: 10%とし、仮に破綻した場合は価値の半分が失われる
- 目標営業利益率: 32.5%と見るが、規制の影響を加味し27.5%とする
- WACC: 当初9.74%
このメインシナリオをダモダラン教授は自ら「楽観ストーリー」と呼び、株主価値を1.475兆ドルと計算している。
これはIPO価格のレンジ1.5-2.0兆ドルの下限をわずかに下回る水準だ。
なお、ワーストシナリオでは株主価値はマイナス、ベストシナリオでは4.04兆ドルと紹介しているが、いずれも「ありうるが可能性は低い」シナリオだという。
SpaceXの時は、噂されていたIPOの時価総額1.75兆ドルに対し1.28兆ドルという評価額をダモダラン教授は算出した。
実際のIPO価格は噂どおりの1.75兆ドル。
株価はIPO後、当初上昇した後に下落し、一時時価総額にして1.4兆ドル近くまで下げた。
そこから回復し、現在は2兆ドルをわずかに下回る水準だ。
もちろんダモダラン教授は、株価が価値評価どおりになるなどとは考えていない。
それはファンダメンタルズ重視の投資家なら誰でも身に染みて理解していることだ。
それでも教授の信念は変わらない。
「株価が私の推計額1.48兆ドルをゆうに上回る場合、私は熱狂の外に身を置く」との投資家としての判断を述べている。
ダモダラン教授は、IPO後もAnthropicのストーリーや株価が「ジェットコースター」のような上げ下げを繰り返すだろうと予想する。
「…Anthropic株が過小評価される日が来るのは可能性ではなくほぼ確実であり、あなたが思うよりその日は近いだろう。」
これまでやってきたように、ダモダラン教授は「その日」に買いを検討するつもりなのだろう。
このブログ記事では、一般株主の議決権を制限する種類株についても論じている。
そうした種類株を導入した企業群を強く批判している。
Anthropicもまた、種類株を存分に活用(濫用?)している。
「…Anthropicは、ベネフィット・コーポレーションの形態(これによりAnthropicはその資金をかなり自由に使うことが法的に許される)と、金正恩さえ恥じ入らせるほど狡猾に都合のよい議決権株式の設計という組み合わせにより、先行した企業群を恥じ入らせるのに成功した。」
某国総書記より恥知らずな企業なのなら投資家として取り組みにくくならないのだろうか、と心配になるほどの毒舌だ。
なお、ダモダラン教授は、Anthropicの目論見書が公表される直前、対象企業のライフサイクルの局面ごとに変わる価値評価手法について論じていた。
特に評価が難しくなる若い企業の評価のしかたに焦点を当て、Anthropicの目論見書を待つ内容になっていた。
かなりWonkishなので当サイトでは取り上げないが、実務家必見の内容であり、こちらも一読をお勧めしたい。
