ショートセラーとして有名なジム・チャノス氏が、引き続きネチネチとハイパースケーラーに対する強気を削ぐような指摘を続けている。
「今回の(市場)サイクルで少なくとも2021年以降まだ起こっていなかった最終段階が今起こりつつある。」
チャノス氏がRiskReversal Mediaで、サイクル終期の兆候が見え始めたと指摘した。
高いバリュエーション、個人投資家の投機の次にやって来たのが、株式の大量発行(IPOとPO)ならびにインサイダーによる株式売却だという。
チャノス氏が言及した2021年には、年前半に同様の兆候が見られ、年半ばに空売りが始まり、年末まで市場全体が上昇したものの、年末にピークを打って、翌年に弱気相場入りした。
(2021年と言えば、株高、ミーム株、SPACなどが思い出される。)
同氏は、今年2026年が2021年に似ていると語り、近く米市場がピークアウトする可能性を示唆した。
チャノス氏は2023年にキニコス・アソシエイツでの受託事業を閉鎖し、業務をファミリーオフィスでの投資(パッシブ中心の運用)や機関投資家へのアドバイスに切り替えている。
顧客へは、40ほどのアイデアを込めた「モデル・ポートフォリオ」を提示し、実際の投資判断は顧客に委ねる形であるようだ。
アイデアとは、特定銘柄のショートとヘッジのための指数ロングの組み合わせを指している。
(つまり、市場の動きに対し中立となるよう目指すヘッジ・ポートフォリオ。)
チャノス氏は早い段階から、ハイパースケーラー等のAIインフラ投資における収益と費用(主に減価償却)のミスマッチの危うさを指摘してきた。
今回も、AIデータセンター事業についての疑問点を2点提起している。
1つは、AI以前のデータセンター企業の動向からの類推だ。
そもそもデータセンターの投資採算が期待されていたほど高くないとの仮説だ。
「レガシー・データセンター企業が突然資産売却に動いている。
現在のこの動きについての私の仮説は、レガシー・データセンター、新たなデータセンターの双方が新たな開発のためのコスト高騰に突然気づいたというものだ。・・・
彼らは将来メンテナンスのための設備投資額が投資家に知らせた金額より膨らむことに気づきつつある。
現状よりリターンが低下するとして、売却を急いでいるのだろう。」
もう1つは、電力不足が計算能力に対する供給制約となり、需要超過が続くとの見方への反論だ。
チャノス氏は、電力は不足していないと真っ向から反論している。
「この国で電力は不足などしていない。
送電や規制に課題こそあるが、安価な電力は不足していない。・・・
電気料金はデータセンターの収入の5-6%に過ぎず、最小のコスト項目だ。
2-3年もすれば、ボトルネックが認識され回避され、問題ではなくなる。」
チャノス氏は、データセンター建設にかかわる政治的問題については認めるものの、電力不足は解決されるべき課題にすぎないと指摘した。
空売りのアイデアを提供し、同時に情報発信によるアクティビズムを実行するのが今のチャノス氏の仕事になっている。
同氏の仮説のすべてが正しいとは限らない。
予見を持たず、受け取る側がしっかり吟味することが大切だろう。
