JPモルガン資産運用部門のデービッド・ケリー氏らが1998年のLTCM破綻を振り返り、投資家への教訓を引き出している。
金融工学を見聞きしたことのある人なら誰もが知っているブラック-ショールズ方程式。
この提唱者、証明者であるフィッシャー・ブラック、マイロン・ショールズ、ロバート・マートンのうちショールズとマートンは1997年にノーベル経済学賞に輝いている。
(ブラックは1995年に逝去。)
1994年に設立されたロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)はショールズとマートンらを擁し、当初から大金を集め、1997年まで大成功を収めた。
しかし、1997年のアジア通貨危機、1998年ロシア危機によって状況は一変、破綻状態に陥った。
ケリー氏はドリーム・チームの失敗について語っている。
市場リターンがいつも正規分布・対数正規分布に従うと信じるほど彼らが粗雑ではなかったと思いたいし、思っている。
もちろん、ブラック-ショールズ・モデルは突き詰めると対数正規分布に基づいており、この要素がいくらかあったかもしれないと少し心配している。…
市場で心配すべきこととは…ファット・テール・イベントだ。
市場が穏やかな状態にある時、正規分布等の仮定が有効に働くことが多い。
しかし、ひとたび市場が荒れ始めると、それまで発現しえないと思われていたテール・リスクが実現してしまう。
もちろんドリーム・チームはそうした点は重々承知していたはずだ。
むしろ確信犯に近かったのではないか。
市場の急変時にヘッジ・ポートフォリオのトラッキング・エラーが拡大しうることはむしろ常識。
その意味でLTCMの成功も破綻も理論的に言って合理的な成行だったかもしれない。
ケリー氏は、正規分布の仮定に加え、資産クラス間の相関についての仮定もまた破綻の要因だと指摘する。
リスクオフの取引が大きくなる、何かが起こってみんなが流動性を確保しようと一斉にリスクから退避すると、収束に賭けていたトレードがすべて一斉に破綻する。
分散ポートフォリオになっていると思っていても、本当は分散されていないということになる。
何かが起こるまで《安全資産》などと呼ばれて買われていた資産が、何かが起こると結局ほかの資産と同様売られてしまうのは珍しいことではない。
ケリー氏は、もう1つLTCMにとどめを刺した残酷なウォール街のやり口を指摘した。
(とある投資銀行(ビデオでは実名入り)がLTCM救済のためのデューディリジェンスで入手した情報にかかわる疑惑にも言及している。)
「ウォール街はLTCMのポジションを知っていて、その逆に賭けた。
それはもちろん、PhDを保有するエコノミストの予想とは逆の方向にさらに市場を動かした。」
苦境に立たされたファンドが他の市場参加者から狙い撃ちに遭うのは珍しいことではない。
先月のシチュエーション・アウェアネスの破綻劇でも同様の動きがあったとされる。
ポジションを解消せざるをえないことが他社に知られると、その先回りをされてしまう。
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