ブレークイーブン・インフレ率は債券市場が織り込む期待インフレの実測値。
そこから読み取れる、近時の長期金利上昇の原因とは?(8/24 浜町SCI)
まずは米国から。
良く知られるように、米国のBEIは極めて安定的に推移している。
大きなショックが走ると急低下するが、それ以外は横這いが多い。
パンデミック以前は2%前後、パンデミック後は2%を少し超える水準で推移した。
米国のブレークイーブン・インフレ率(黄、10年)

今年に入って米長期金利は上昇の兆しが見える。
名目債利回り(赤)と物価連動債利回り(青)の両方が上昇しており、BEI(黄)は上昇していない。
近時の米金利上昇をインフレ懸念によるものと言うのはやや難しい。
つまり、近時に関する限り、実体経済の過熱や財政懸念にともなう金利上昇とは言い難い。
実質利回りが上昇していることを考えると、経済成長率の改善、または金融市場の需給の逼迫というべきかもしれない。
足下について言えば、よく《米経済は堅調》と言われるように、悪くないのは明らかだが、成長率(とりわけ長期的に)が上向いているとまでは言えるのかは疑問。
ならば、よく言われるように、財政赤字のための資金調達とAI関連投資のための資金調達が金融市場の需給を逼迫させているという解釈が腑に落ちるように思う。
次に日本。
日本のBEIは全く安定していない。
パンデミック以降、上昇基調にある。
もっとも、現在は2%前後だから、日銀の物価目標に先行きの長期ベースで擦り合ってきたとも言える。
足下のインフレはまだ心配だが、先行きへの期待は程よい水準にあることになる。
日本のブレークイーブン・インフレ率(9年、黄)

日本のブレークイーブン・インフレ率(9年、黄)2025年以降

では、近時の長期金利上昇ではどうだったのか。
たとえば直近数か月で見れば、BEIは上昇していない。
つまり、直近数か月の金利上昇だけを見る限り、主因は必ずしも財政懸念とは言い難い。
ただし、積極財政にともなう金融市場の需給逼迫が強く意識された可能性はある。
前政権時、日本のBEIは1.5%前後で安定したかに見えた。
新政権誕生後のスパンで見ると、BEIは明らかに上昇している。
日本の場合、潜在成長率上昇を議論するのはまだ早いだろうから、この政権における金利上昇の主因は財政に根を持つインフレ懸念と資金需給にあるのだろう。
