パーシング・スクエアのビル・アックマン氏は、利上げがインフレを抑制するのでなく押し上げる可能性があると主張している。
FRBによる短期金利引き上げがインフレを抑制するという前提は、金利上昇が需要・投資を抑制するとの信念に基づいている。
しかし、仮に利上げが需要・投資を抑制しない場合どうなるだろう
アックマン氏は、FRB利上げがインフレ抑制に寄与しない可能性についてツイートしている。
同氏は理由として、AI関連需要もエネルギー需要も金利上昇では抑制されにくいと指摘し、その場合に起こることを予想する。
「金利費用がすべてのモノに乗せられるにつれ、この独特な時期における金利上昇がインフレ上昇につながらないと言えるだろうか?」
仮に金利上昇によるコストアップがインフレを煽る場合、《インフレ退治には利上げが必要》というロジックで金融政策を運営すると、インフレが進むほどに利上げが行われ、さらにインフレが進む、といった自己実現的サイクルに陥ってしまうと警告している。
アックマン氏が言いたいのは、AI関連需要が桁違いに強いこと、エネルギー価格高止まりが需要でなく供給側の要因であることから、利上げが逆効果になりうるということだろう。
こうした、一見伝統的考えに反する主張はいつの時代にもあることで、一理あることも多い。
各国がインフレ目標を掲げ超低金利政策を長く続けていた時期、金融緩和がかえってインフレを押し下げるという主張があった。
ゾンビ企業など非効率な供給者を支援し温存することで、デフレ側の圧力になるという論拠だった。
また、フィッシャー方程式を逆読みするネオフィッシャリズムのような主張もあった。
いずれも荒唐無稽とは言えず、一理ある、といったところだったが、当局から取り上げられることはなかった。
背景には、この主張が金融緩和でなく金融引き締め(実際には正常化)の主張に結び付くこともあったのだろう。
ディスインフレの時代、金融緩和は大人気の政策だった。
アックマン氏の《利上げ逆効果説》は一定の支持を得るかもしれない。
同氏が支持してきた大統領とも同じ結論になる。
皮肉なのは、インフレの主因の1つ、イラン紛争について、当初からアックマン氏が支持を表明してきた点だ。
仮にアックマン氏の言う通り、利上げがインフレに対し逆効果となるなら、他に何がやれるのだろう。
米政府が議会の承認もなく勝手にエネルギー価格上昇につながる戦争を始め、一方で民間経済はとても強い。
常識的には財政を引き締めるということになろうが、その気配は微塵もない。
アックマン氏は、FRBが間違えた可能性を指摘した。
しかし、代案は何も提示していない。
