PIMCOのティファニー・ウィルディング氏らが、AIの金利に及ぼす影響について論じている。
AIが最終的には中立金利を上昇させると論じる中央銀行高官が増えている。
直感的には、仮にAIが生産性を高め長期的に成長を押し上げるなら、家計は貯蓄するインセンティブが低下し、実質中立金利を押し上げる。
ウィルディング氏らが自社ポッドキャストで、AIと中立金利の関係について整理している。
こうした理屈っぽいテーマについて、株式投資家は無頓着であることが多い。
ところが、実質中立金利(r*)については無頓着であっても、インフレについては積極的にアピールする。
AIが長期的に生産性を高める場合、インフレが低下し、それが名目中立金利を押し下げたり、資産価格を押し上げたりするといった具合だ。
しかし、このアピールは一方的だ。
生産性が上がることでインフレが下がることと、成長率が上がることとの間にはダブルカウントされている部分がある。
生産性が上がって実質成長率が上がるなら、インフレが下がるものの実質金利は上がるかもしれない。
結果、名目金利が下がるとは限らない。
PIMCOが言及した中央銀行高官たちの見解は、まさにその点を指摘したものだ。
生産性上昇でインフレが低下したとしても、実質中立金利が上がるなら、名目中立金利がどちらに動くかは微妙だ。
結果、政策金利の行方も予想しにくくなる。
PIMCOはこの問題について、AI関連ニュースとフォワード金利の関係から検証している。
5年先5年物フォワード金利を中立金利の近似値として用い、重要なAIモデル発表後の反応を集計したものだ。
「長期の実質金利・名目金利はAI関連ニュースに際し上昇するよりむしろ低下してきた。」
フォワード金利が中立金利の近似値として適切であるかには議論もあろう。
債券市場がAI関連ニュースの意味合いを瞬時に適切に織り込めると仮定するのは少し行き過ぎのように聞こえる。
だからと言って、簡単に棄却すべき議論ではない。
つまりは、両論ありうるということだろう。
そこで、このポッドキャストで言及された上昇・低下の要因を列挙しておこう。
上昇要因:
- 生産性上昇による潜在成長率上昇
- 家計の貯蓄意欲低下
低下要因:
- 雇用の悪化リスク
- 家計の貯蓄率上昇
- 財政への好影響でタームプレミアム縮小
現在、AIインフラ・ブームによる短期的なインフレ押し上げが問題視されている。
これが短期的な金利上昇を促しかねないとの文脈だ。
もう少し長いホライズンで見ても、AIが金利の上下どちらを促すかについて解決されていない疑問が残されている。
