ジム・チャノス氏が、ショートしているストラテジー社(旧名 マイクロストラテジー)の経営者との間で軽い論争を引き起こしている。
こうした論争は同氏にとってエンロン以来のルーティーンだ。
「こういういつもの経営者の言葉が大好きだ:
『チャノスは私たちの事業を理解していない。』」
チャノス氏がBloombergのインタビューで笑いながらつぶやいた。
今回の「経営者」とは、FPでも紹介済みの莫大なビットコインを保有するストラテジー社マイケル・セイラー氏だ。
活発に資金調達してビットコインを買ってきた結果、楽観的な市場は時価純資産を大幅に上回る株価を付けている。
チャノス氏は、ストラテジー株が過大評価されていると見て、同株をショートし、ビットコインをロングしている。
これに対しセイラー氏はBloombergで、チャノス氏が同社事業モデルを理解していないと反論したのだ。
同氏の論拠は:
- ストラテジーは「ビットコイン担保クレジットの世界最大の発行会社」。
- 先週の資金調達は非累積的優先株によるもので、償還の必要はなく、希薄化もない。
- 普通株の株価が下がれば、優先株を発行して自社株買いを行う。
- 普通株の株価が上がれば、チャノスは大損する。
- チャノスは、ストラテジーが持株会社やクローズエンド信託ではなく事業会社であることを理解していない。
- 「当社が利回り10%の優先株を発行でき、過去4年半で57%上昇したビットコインに投資すれば、普通株の株主にとって事実上無リスクで47%のアービトラージが取れている。」
理解した上で話しているのか定かではないが、ほとんど反論になっていない。
特に最後の「無リスク」との言及など全くのでたらめであり(これは無リスクなのではなく、途中経過についての結果論に過ぎない)、背中が寒くなるような話だ。
チャノス氏が指摘しているのは、ストラテジー株価が保有ビットコインの時価と大きく乖離している点なのに、その点には答えず、過去と同じビットコイン価格上昇を前提にして「無リスク」と言っている。
チャノス氏は、ストラテジーに対する見方を端的に述べる:
「マイケル・セイラーはすばらしいセールスマンだ。
でも、それだけ。」
チャノス氏はセイラー氏の議論を「金融についての意味不明」とこき下ろし、セイラー氏の自身への批判を逆手にとって反論している。
「実際のところ、私はセイラーが提唱しているとおりのことをやっているんだ。
ストラテジーの証券を売却してビットコインを買っている。
これはヘッジ・トレードであって、ビットコイン価格がどちらに行こうが関係ないんだ。」
確かにチャノス氏は、ビットコイン価格の変動に対して中立のポジションを取っている。
同氏が損失を負うとすれば、ストラテジー株価と同社保有ビットコイン時価の乖離がどんどん拡大していく場合だ。
一方、ストラテジー株主はおそらくビットコイン下落時に大きな痛手を受ける。
そうなれば株価下落要因となるだけでなく、ストラテジーの資金調達は困難になっていくだろう。
ストラテジー株を売ってビットコインを買っている点で同じなのに、将来の見通しはずいぶん違うように見えるのがなんとも皮肉だ。
チャノス氏は、ストラテジー株の回転期間がわずか4週間と短いことから、同株を「市場において最も活発に売買されている投機商品の1つ」と指摘している。