ピーター・シフ氏は日本の今後の政策について2つのシナリオを想定する。
政策金利を十分引き上げるか否かのシナリオ分けであり、その選択が米国に深刻な波及効果を及ぼすという。
十分な引き締めが行われるケース:
日本が正しいことをして、株式・債券を下落させ、景気後退を引き起こす。
世界3位の債権国で突然金利が跳ね上がり、緊縮財政が採られ、景気後退となれば、日本人はレパトリ(訳注:資金の国内回帰)するだろう。
国債利回りが高くなれば、莫大な資金が日本国債に流入し、日本人は金利の高くなった銀行に預金して、投資で出た損失をカバーしようとする。
…そしてこのシナリオでは円が上昇する。
…それが円キャリー・トレードを完全に破滅させる。
これが世界中に衝撃波を送り、特に米国で強く感じられることになる。
この人に不吉な未来を語らせたら超一流だ。
2024年夏に起こった円キャリーの巻き戻しの記憶を呼び起こす。
同年7月の日銀利上げ決定とFRB利下げ観測は翌8月上旬に急激な円高・世界株安を引き起こした。
シフ氏はさらに日米の特別な関係を解説する。
「米国債を含む米資産を売るのは日本の投資家だけではないだろう。
日本政府は1.1兆ドルの米国債を保有し、世界一の米国債の保有国だ。
日本政府が正しいことをやるなら、円を支えるためにやらなければならない1つが債務返済になる。
どうやって債務返済すべきかと言えば、米国債の売却になり、これも円を支えることになる。」
外貨準備の米国債を売って円買いドル売り介入が行われることを想定した発言である。
実際、4月終わりからの為替介入では外貨準備の米国債が売却されたと見る向きが多い。
日本が円買い介入を行うことで米国債が売られる構図は、ベッセント米財務長官が円安を警戒する大きな理由であろう。
十分な引き締めが行われないケース:
日本が正しいことを行わない場合、金利をそのままにしたり、1.25%など不十分な利上げにとどまる場合、円相場がクラッシュするかもしれない。
すぐにドルを下落させはしないかもしれないが、日本の債券市場がクラッシュし、それが米債券市場や日本株市場に示唆を与えるだろう。
そうなれば、やっぱり大きなレパトリが起こり、多額の追証が発生する。
日本は世界中、特に日本が多く保有する米国の資産を売るだろう。
シフ氏は、どちらのシナリオになろうとも良くないことが起こり、それが米経済・市場に波及すると話す。
(ハッピーエンドのシナリオは提示しないところがさすがだ。)
日本が対外債権国、米国が世界一の債務国であることから、その観点からすれば米国の方が脆弱だと主張している。
シフ氏の予想は決まった未来ではあるまい。
しかし、やや直線的すぎるとしても、悪いシナリオとしては筋が通っている。
以前は同氏の予想は、悲観的過ぎる、時間軸がともなわない、として軽視されることが多かったが、同氏の予想が実際に実現していくにつれ説得力が増してきているのも事実だ。
少し前まではある種の《終末論》と考えられていたものが、今では随分と現実味を帯びてきた。
ハッピーエンドの可能性も忘れないようにしつつ、ある程度の備えだけはしておきたいものだ。
