PIMCOが、マートン・モデルを用いて最近のクレジット市場を解説している。
個々の分析は原典に委ねるとして、このモデルのフレームワークを紹介したい。
株主は企業の資産に対するコール・オプションをロングし、債券保有者は同資産のプットをショートしている。
言い換えると、株式投資は上方の可能性に注目するのに対し、クレジット投資は下方リスクを低減しようとするものだ。
PIMCOが自社ブログで書いている。
マートン・モデル自体は、オプションの考えを用いた信用リスクモデルだ。
モデルを用いて幅広いメッセージが引き出されている。
上記引用の2文目は、その1つを紹介したものだ。
ここで、このモデルについていくつかバランス感覚を養っておこう。
ビジネススクールのファイナンス中級で習う内容だ。
- 同じ行使価格のコール・オプションからプット・オプションを差し引くと、一直線になる。
これを平行移動させる(リスクフリー資産を足し引きする)と原資産と同等のペイオフになる(コール・プット・パリティ)。
これは、上記引用の1文目にあたり、株主の価値と債権者の価値を足し合わせると企業価値になるという定義とよく擦り合う。 - 株主がコールをロングするという見做しは、有限責任の考えと擦り合っている。
他の条件が不変なら、ボラティリティが高まるとコールの価値が上昇する。
株主価値向上を重視する場合、経営者にはリスクテイクによるボラティリティ上昇のモチベーションが働く。 - ボラティリティが高まるとプットの価値も上がるので、プットをショートしているのと同様の債券にはマイナスになる。
PIMCOがマートン・モデルを引いたのは
- AI投資において積極的なリスクテイクが見られる
- テック株へのセンチメントが今四半期改善している
- クレジットは引き続き「より抑制的」
などの現状が同モデルでよく説明できるためだ。
もっとも、こうしたモデルを用いずとも、これまでも同じメッセージは多くの人から指摘されてきた。
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このモデルは、それをより定型的に説明してくれるということだろう。
先日Alphabetによる5,765億円の円債発行が報じられた。
償還期限3年から40年の7本立てで、JGBに対するスプレッドは50 bpから125 bpだそう。
一見魅力的に見えるし、フィクストインカム投資家にとってはJGBよりはマシなのだろう。
一方、クロスアセットの投資家は異なる見方をする人もいるのかもしれない。
