モルガン・スタンレーのアンドリュー・シーツ氏は、最近の金利上昇について債務側の問題としてではなく資産側の問題として注視している。
「(積み上がった連邦)債務にも関わらず、米債券市場はかなり順調だ。
米インフレ期待は年初来ほとんど変化がない。
予想される債券市場のボラティリティは史上最低水準だ。
実際のところ、最近の米財務省による債券市場への介入に投資家が驚いた1つの理由は、市場にストレスが加わっていると通常示す兆候がなかったことだろう。」
シーツ氏が自社ポッドキャストで、米長期金利上昇に関わる大騒ぎについて冷静な見方を述べている。
米債券市場は順調であり、介入を必要とするような状況ではないとの見方。
金利上昇を債務問題と捉える場合、特に民間部門では問題は見当たらないという。
- 企業: AI投資増大にも関わらず、企業債務対GDP比率は過去10年ほとんど変わらず、パンデミック前より低い。
- 家計: 家計債務対GDP比率もパンデミック以前より低く、2000年より低い。債務の多くは過去の低い金利の住宅ローン。一方で保有資産は記録的高さ。
つまり、民間部門のバランスシートは極めて健全で、公共部門との乖離が開いている。
シーツ氏はこれが日米欧に共通の現象だとし、これら国々の「政策選択」の結果だと指摘する。
先進国において長期金利上昇が心配されているのも事実。
しかし、シーツ氏のように、債券市場の挙動としてはむしろ正常と考える人も多い。
では、足下の長期金利上昇は心配する必要のないものなのか。
もちろんそうではあるまい。
その変化がたとえ正常化であっても、それが痛みをともなわないことを保証するわけではないからだ。
シーツ氏は、債務としての問題ではなく資産としての問題こそが市場により大きな影響を及ぼしうると話す。
利回り上昇が効いてくる問題とは、企業が借金をやめたり消費者が支出しなくなったりする場合より、投資家が株式より債券を得と考える場合の方が大きいのかもしれない。
債務とは借主にとっては借金だが、投資家にとっては資産だ。
借金が増えていることについては世間が心配しているほど喫緊の問題ではないかもしれないが、利回りのよい資産が増えていることは株式等からの乗り換えを引き起こすかもしれない。
ハイパースケーラーらの莫大な借金も、GDPや民間の財務体力から見れば問題視するレベルではないのかもしれない。
しかし、政府と民間の間の資金の取り合いの結果、債券等の利回りが上昇しており、債券等の魅力が相対的に高まっている。
これが株から債券等へのシフトを引き起こすかもしれない。
シーツ氏は「このシフトの明白な証拠はまだない」とし、好調な企業収益が株式バリュエーションを支えていると指摘する一方、株式と債券の間の投資家の取り合いには注意が必要と述べている。
さらに、通貨 米ドルの価値について弱気な見方を示している。
当面の間、米債務増大と米国債市場への介入は米ドルを弱くするかもしれない。
特に、債務水準がはるかに低く、利回りの高い通貨、豪ドルに対しては弱くなりがちだ。
