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東京証券取引所アローズ 【Wonkish】JPXプライム150指数の迷宮(補稿:gの導入)
2023年7月6日

前回記事について早速お叱りを受けた。
とてもありがたいことだ。
しばしばゴードン・モデルを使うくせに、何で今回は成長率gを無視したのだ、というもの。
gを導入すると、それはそれで面白いので、机上の空論の匂いがするが紹介しよう。(浜町SCI)


成長率gを考慮したゴードン・モデルとは

 株式時価総額 = 配当総額 ÷ (株主資本コスト – g)

というもの。
前回記事では分子が当期利益だったのに、今回は配当総額になっている。
なぜかと言えば、前回記事では暗に配当性向を100%と仮定してあったためだ。
この場合、配当総額は当期利益に等しくなる。

今回は成長を加味している。
ゴードン・モデルでは、内部留保が成長のために必要と考えるため、配当性向が100%未満と仮定されることになる。
オールド・エコノミーでは至極自然な仮定だったのだと思う。

さて、一行一行丁寧に変形すると、ゴードン・モデルは

 株式時価総額 = 当期利益 × 配当性向 ÷ (株主資本コスト – g)

 株主資本コスト – g = 当期利益 × 配当性向 ÷ 株式時価総額

 株主資本コスト = 当期利益 ÷(株主資本 × PBR)× 配当性向 + g
  = ROE × 配当性向 ÷ PBR + g

 エクイティ・スプレッド = ROE – 株主資本コスト
  = ROE -(ROE × 配当性向 ÷ PBR + g)
  = ROE ×(1 – 配当性向 ÷ PBR)- g

前回記事と比べるとわかるが、前回の答は配当性向100%、gが0の場合に該当する。
こんな雑なモデルでも、なかなかよくできている。

この結果を味わってみよう。

内部留保と成長のトレードオフ

まず、途中の株主資本コストの式に前回出てきた益回りを招待しよう。

 株主資本コスト = 当期利益 × 配当性向 ÷ 株式時価総額 + g
  = 益回り × 配当性向 + g

前回記事では益回りが株主資本コストの推定値になりうるか触れたが、ここでは明確に異なる結果になっている。

先ほど説明したとおり、このモデルでは配当性向が上がれば、つまり内部留保が少なければ、gが大きくならないという考え方を採っている。
だから、配当性向が上がることは株主資本コストの増大要因だが、gが減ることで株主資本コストの減少要因になる。
逆もまた然り。
つまり、配当性向あるいは内部留保と成長とはトレードオフの関係にある。
だからこそ企業の資本政策は重要なのであり、だからこそJPXは上場企業を啓蒙しようとしているのだ。

最適解がどこにあるかは難しい問題だろう。
しかし、筆者が思うに、もしも企業に(資本コストに見合う)gのチャンスがあるなら、それを優先していいのではないか。
少なくとも現状の金融環境が続く限り、ファイナンスはついてくるだろう。
逆に十分にgのチャンスを見いだせないなら、内部留保を減らすべきだろう。

(次ページ: そもそも資本コストって何?)


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