まだ米経済とAI分野のファンダメンタルズは強い。
一方で、AIが稀有な技術革新であるがゆえにバブルになるのは不可避との意見も多い。
ただし、その議論を受け入れるにしても、すでにバブルなのか、これからそうなるのか、おそらく誰にも定かにはわからない。
現在、特にMag7をはじめとする大手テック株がバブルであるか否かについては、PERを見て議論する人が多い。
特に2000年ITバブルと比べ、2つの大きな違いが指摘されている。
- 現在の大手テック銘柄の多くがすでに高収益を上げている
- PERが2000年と比べ、あるいは成長率を勘案すると合理的と言えるほど低い
本ブログでも早いうちからこれらの点を挙げ、今回はITバブルとは異なると論じてきた。
しかし、最近のAI業界で起こっていることを見ると、この見方がフェアとも言い切れなくなってきた。
その変化とはAI投資の急増と債務によるファイナンスだ。
2000年には、アイデアだけで収益化していない(かつ、結果的に収益化できなかった)ドットコム企業が莫大な時価総額を有していた。
IT以外ですでに収益化し巡行状態にある銘柄はオールドエコノミーと呼ばれ、さほど高いPERではなかった。
シーゲル教授が以前語ったところでは、2000年初めのS&P 500のPERは全体で30倍、テック株は60-70倍を超えていたという。
現在では特に調整後、こうした差が極端ではなくなっている。
これには2つの疑問符も付くだろう。
- EPS予想が利益サイクルを反映できていない。CAPEレシオで見ると現在は極めて高い水準。
- ハイパースケーラーは、AI事業とそれ以外を分けて考えるべき。
前者については《今回は違う》の是非を問うものであり、今回もEPSがトレンドへの中央回帰をするかどうかは議論があろう。
EPSは趨勢的に上がるという意見も多い一方、AIの効果が総需要を高めるものでなく効率化に留まるなら変わらないという意見もある。
問題は後者だ。
仮にハイパースケーラーを2000年の時のようにニューエコノミー(AI需要)とオールドエコノミー(それ以外)の部分に分けると
- ニューエコノミー: 設備投資ブームの真っ最中であり収益化は実現していない。
- オールドエコノミー: 独占的地位により極めて潤沢な利益を計上している。
私たちが《ハイパースケーラーのPERは高くない》という時、それは《ニューエコノミーの寄与が大きくなった株価》を《オールドエコノミーのEPS》で割っている。
これは意味があることなのか。
ニューエコノミーはITバブルと同じく、いまだPERが計算できない(分母がマイナス)状態ではないか。
もちろん、1つの企業のどんぶりの中でオールドエコノミーからのキャッシュインがあることは大きな気休めになる。
キャッシュカウが稼いだキャッシュを成長分野に振り分ける社内ファイナンスの好例だ。
しかし、全体のどんぶりが借入・社債で資金調達を始めたら少し話が変わってくる。
借金・社債はいつか返さなければいけない。
何かが膨張しても、それが弾けなければ問題はない。
弾けるからこそ問題であり、弾けるからこそ(事後的に)バブルと言われる。
それを弾けさせる1つのケースが、お金を返すことだ。
こんな思いが市場を揺るがせているのだろうし、だからこそ《ハイパースケーラーのPERは高くない》のだろう。
しかし、強気相場やバブルは弾けるまで上昇を続ける。
みんながバブルは弾けたとわかるまで、上昇の確率が下落の確率を上回るものだ。
これから数日、数か月、数年、そういう時期がやってくる、あるいはそう心配される時期がやってくるのではないか。
