ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、確率は低いとしながらも、ウクライナ問題の深刻化に備える処方箋を公表している。
私は1945年に始まり77年目となる大きなサイクルを最も注目したい。・・・
私はこの対立が指し示す世界秩序の変化の大局により注目している。
ダリオ氏が自身のSNSで、ロシアによるウクライナ侵攻を世界秩序のサイクルというテンプレートにあてはめて考察している。
このサイクルとは新著『Principles for Dealing with the Changing World Order』で主張した経済・市場、国内対立、国際対立という3つの相互に影響しあうサイクルであり、覇権国家と世界秩序の興亡のサイクルだ。
過去のサイクルを紐解き、温故知新で未来の可能性を見出そうとしている。
ダリオ氏はSNS記事の中で、ロシアとNATOの武力戦争に発展する可能性について論じている。
(さらに中国がロシアを支援する可能性を心配している。)
そうなる確率は低いとしつつ、危険性に備えなくてもいいほど低くはないとも書いている。
武力戦争に勝つ可能性が最も高いのは、最も強い者ではない。
もっとも長く過酷な苦痛に耐えられる者だ。
この点でロシア人や中国人は、西側の人々より強い。
泥沼の武力戦争になれば、決して西側有利とはいえないと戒め、確率の低いシナリオながら、対処策を考えるべきと促しているのだ。
ダリオ氏は第2次大戦などをあたり、いくつか予想される影響を列挙している。
- 株式市場の閉鎖: 投資家は資産にアクセスできなくなる。
- お金・信用の拒絶: 貨幣の価値に疑義が生じ、非同盟国間で外国通貨が拒絶される。
- 金・銀・物々交換が主流に。
- 価格・資本フローの統制: 真の価格がわからなくなる。
リスク・シナリオにしても少々かけ離れたシナリオに感じられるが、ロシアとNATOの戦争なら世界大戦だろうから、こうなるのだろう。
リスク・シナリオだとしても、ここまで考えなければいけないのか、判断に苦しむところだ。
こうした話を聞くと、このところ分が悪い暗号資産のファンが小躍りするかもしれない。
もっとも、上記2つ目、3つ目を見る限り、暗号資産は2つ目の部類に入るように思える。
また、最近の値動きを見ると、リスク・ヘッジとしても優秀な手段でないのは明らかだ。
ダリオ氏は、一たび武力戦争が起これば、投資家が富を守るのは困難と書いている。
人々や国々が生き残りのために戦っている時には、通常の経済活動は制限され、伝統的な安全資産は安全でなくなり、資本移動は限定され、高い税金が課されるため、戦時に富を守るのは困難だ。
持てるものの富を守ることは、最も必要としているところに富を再分配する必要に比べ優先順位が高くなくなる。
戦争が始まれば、一般には債務性資産を売り払い金を買うのが良いとされる。
戦争の資金調達が借金と貨幣増発により行われ、それが債務とお金の価値を下げ、クレジットを受け入れないことが正当化されるからだ。
幸か不幸か、今回の処方箋は戦争前の処方箋と共通の文脈を有しているらしい。
パンデミックと同様、今回の戦争も、ダリオ氏の行程表への確信を強めたらしい。
これまで同氏の推奨を取り入れてきた人たちは、程度の変更ぐらいで済みそうだ。
それだけに、眉に唾をつけた上で、ありがたく承っておこう。