日本において市中銀行の法定準備預金額が金融政策の手段として導入されたのは1957年施行「準備預金制度に関する法律」からだ。
日銀は預金準備率を上下することで金融環境を引き締めたり緩めたりしていた。
しかし、1991年10月を最後に預金準備率は変更されていない。
2008年には補完当座預金制度の下、超過準備に対して付利がなされるようになった。
目的は、潤沢すぎる資金によって金利が過度に低下するのを防ぎ、政策金利を許容レンジに収束させることにある。
仮に、付利をやめるとどうなるのか。
- 市中銀行が日銀当座預金から超過準備を引出し、金融市場に振り向け、市場金利が低下する。
これは、日銀が特に短期市場の金利(の下限)を操作できなくなることを意味する。 - 市中銀行は莫大な余剰資金を投融資に振り向ける。
- 日銀の財務が助かる、つまり、シニョレッジが増大する。
前の2つを単純に考えれば、強力な金融緩和が行われ、資産に莫大な資金が向かい、おそらくバブルになるのだろう。
とてもインフレの時代にやれる話ではない。
だからこそ、早川氏は付利をやめるのではなく預金準備率を引き上げる可能性を指摘したのだろう。
さて、残る3つ目の変化は何を意味するのか。
得をする者がいれば損をする者がいるのが世の常だ。
付利をやめるにせよ、預金準備率を引き上げるにせよ、これは実質的な市中銀行への大幅課税を意味する。
さらに、そのコストは預金者にも転嫁されるのだろう。
政府・中銀が財政・金融政策でお金を増やし、その増えたお金に実質課税をするというのは、なんとも理不尽なように感じられる。
量的緩和の時代に比べれば、投資における金融政策の影響度は小さくなったように思える。
しかし、金融政策が正常化するまで、落とし穴はなくならないのかもしれない。