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レイ・ダリオ:ある人の債務はある人の資産。バランスが重要

ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が「新FRB議長へのアドバイス」と題するビデオを公表している。


「今こそ党派ではなく原則(プリンシプルズ)が求められる時だ。
原則を言い換えれば、ほぼ機械的に決まるということ。」

ダリオ氏が4分間の短いビデオでケビン・ウォーシュ新FRB議長に対し金融政策運営について提言している。
同氏はウォーシュ氏の議長就任が確実視されるようになった4月、当時の経済環境を踏まえて、安易に利下げすべきでないと主張していた。
理由は、まだ上昇していたインフレ、金融政策の信認の確保であった。
当時まだ米大統領はFRBに利下げの圧力をかけ続けていた。

ダリオ氏は1980年代、いわゆるボルカー・ショック後に相場を読み違え廃業寸前に追い込まれた経験がある。
それでもなおポール・ボルカーを度々「私のヒーロー」と称賛し続けた。
ダリオ氏は、原則に基づく規律ある政策を理想としてきたのだ。

ダリオ氏はこのビデオで「望ましい結果とは、経済成長とインフレがともに重視されうまくバランスが取られた、バランスのよい経済」だと述べている。
FRBはそれを目指して金利を調節すべきという。
同氏は、ドル金利やイールドカーブが米国のみならず世界にとって重大な影響を及ぼすと指摘している。
すべてのモノは、ドル金利というリスクフリー金利をベースに決まるとの、マクロ投資家としての世界観である。

理想的には2%のインフレ率、おそらくバランスのためにはもう少し高いインフレ率が良い。
しかし、同時に長い目で見て実質金利は、3%から1%ぐらいで変動してもよいが、2%程度が必要だ。

ダリオ氏は、名目債と物価連動債の利回りの差で計算されるブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の近似的実測値)を2%前後に収めるよう求めている。

6月末時点の米ブレークイーブン・インフレ率は5年で2.3%、10年で2.2%。
ダリオ氏の望む、ほどよい水準にあることになる。

ダリオ氏が重視するのは「バランス」だ。
この背景には、同氏の口癖である「ある人の債務はある人の資産」という考えがある。
特に金融資産は債務者(例えば政府や企業)の側からだけで見るのでは不十分だし、債権者(投資家、貸し手)の側からだけ見るのでも不十分だ。
市場を均衡させたいなら、双方が折り合えるところを探すしかない。

金利を高くしすぎてはいけない。
そうすれば、経済・支出・市場を損なってしまう。
しかし、低くしすぎてもいけない。
債権者が良いリターンを得られなくなってしまう。

実質金利の実測値とされる物価連動債利回りを見ると、10年物(6月末時点)で米国が2.2%、日本が0.5%。
これが債権者の側が受け取る利回り(税前)だ。
米国は、ダリオ氏の考えるスイートスポットに収まっている。
日米を単純に比較するわけにはいかないが、やはり日本の0.5%は見劣りする。
5年になると米国が1.9%、日本が-0.3%とさらに差が開く。
実質の短期政策金利になるとこの差がさらに広がる。

もちろん、金利、特にそれぞれのリスクフリー金利の近似値として扱われる国債利回りを議論するということは、政策金利だけでなく国債価格、ひいては財政や為替を議論することになる。

少し前までの日本政府を思い出せば、債権者の側からの視点が明らかに欠けていた。
市場が金利上昇や円安で反応すると、ヒステリー、アレルギー、投機筋、と言ったレトリックで強弁し続けようとした。
最近では、ようやく市場に対して真摯に向き合うような気配が見られるようになった。
例年6月には閣議決定される「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」が今年は7月中旬になっても決まらない。
市場は、何が「骨太」になるのか、「バランス」が取れるのか、息をひそめて見守っているのだろう。

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