モルガン・スタンレーのデービッド・アダムス氏が、円安と日本株の関係について、よく聞く話の先について解説している。
「『弱い』という表現は日本円に対しては控えめすぎる。
名目ベース、対ドルで円は1990年以来最弱の水準で、実質で見ると1960年代以来の弱さだ。
なぜ弱いのかの説明はとても簡単: 金融政策の乖離だ。
経済理論によれば、資本が自由に移動する限り、国は金利と為替レートを同時にコントロールできない。」
アダムズ氏が自社ポッドキャストで1日、超円安について解説した。
「FRBの政策金利が数十年で最高で、日本が基本的に不変なのだから、経済ファンダメンタルズと合致している。」
国際金融のトリレンマを引きつつ、近年の円安はファンダメンタルズ通りとの見解を示した。
わざわざこう述べたところを見ると、何かと「投機」というあいまいな言葉で言い訳をする人たちに暗に反対意見を述べているのだろう。
さらにアダムス氏は、円安と日本株買いの関係にも言及した。
決して、円安だから日本株買い、というよく知られた方の話ではない。
日本株買いだから円安という話だ。
外国人投資家が日本の株式市場への資金投入を増やす時、多くの投資家は為替エクスポージャーをヘッジしている。
これが意味するのは、先渡市場でドルを買い戻すということ。
日本株が上昇すればするほど、ヘッジも増やし、円に対するドルの需要が増える。
この直後、アダムス氏は少々難解な発言をしている。
「簡単に言うと、ドル円上昇継続の最良の結果とは、日米金利差と日本株の両方が上昇し続けることだ。
多くの投資家にとって、これがどんどんメイン・シナリオになりつつある。」
「最良」とは何で、「結果」とは何か、少々理解しがたい。
ただ、脳裏に浮かんでいたであろうイメージは理解できる。
仮に円安が日本株高を生み、日本株高が円安を生むなら、これは自己強化的サイクルを構成する。
日本の金利上昇余地が極めて小さい場合、仮に米金利上昇(あるいは低下期待の剥落)となれば、この自己強化的サイクルをさらに強化する。
ドル円上昇と日本株高をメインシナリオと見る見方が強まっているという話なのだろう。
皮肉なのは、日本人にとっては株で買って為替(または潜在的インフレ)で負けかねないというところだろう。
かといって、米経済が風邪を引けば、サイクルが逆転し、通例どおりなら、為替で買っても株で負けてしまうことになる。
あまり欲張らないこと、貨幣錯覚に騙されないようにしたいものだ。