ふくおかFGの佐々木融氏は、政府が積極財政を取るならば金利上昇を甘受すべきと話している。
補正予算をやるのはいいが、金利上昇を受け入れるという形、だから日銀も短期金利を必要な分上げる、長期金利も必要な分上がるという形でやるのなら、どこかで均衡してくると思う。
佐々木氏が東京金融取引所ビデオで、財政・金融政策について言及した。
積極財政をやりながら、政策金利・長期金利を低くとどめ、円相場は支えたいというのは現実的でないとの示唆だろう。
長期金利がやや急ピッチで上昇しているのに、円相場はいまだに弱いままだ。
長期金利上昇自体は円の魅力を増す現象なのに、円相場は介入ラインとして意識される160円の手前に張り付いている。
実勢による「均衡」とはほど遠いように見える。
ファンダメンタルズの要因に加え、実質ベースの短期政策金利が深いマイナスに沈んだままであることが一因だ。
日銀内外でBehind the curve(後手)、周回遅れといった指摘が増えている。
佐々木氏は、次のようなフォワード・ガイダンスを提案している。
合計で今ならもう2%ぐらい利上げしないとだめだ。
一番いいのは、毎回の政策決定会合で25 bpずつ上げるというメッセージを出すことだろう。
急激な利上げを避けつつ、将来の利上げを市場に織り込ませるやり方だ。
多くの識者が日銀の出遅れを指摘している。
日銀の動きが遅すぎる面がないとはいえまいが、視聴者・読者がそこだけを切り取って理解するのも避けるべきだろう。
2013年の政府・日銀のアコード以降、金融政策は独立した枠組みというより、単なる《通過勘定》にすぎなくなっている。
現在のインフレ・円安の根本的原因の1つが政府債務・通貨の大量発行にあるのは明らかだ。
統合政府の考えに立って、連結ベースで政府債務・通貨を見れば、これを増やした張本人は日銀というよりむしろ政府である。
日銀は(それを財政従属と呼ぶか否かは意見があろうが)政府の債務発行を結果的あるいは事実上支援したにすぎない。
日銀はもはや《通過勘定》にすぎない。
(強いて金融政策に問題があるとすれば、長短スプレッドの拡大かもしれない。
これは、タームプレミアムや為替ヘッジコストなどで歪みを生む要因になる。)
仮に《日銀はほぼ通過勘定》という見方を受け入れるなら、議論すべき本当のテーマは別のところにあるはずだ。
たとえば、仮に日銀のバランスシート正常化が必要とするならば、それを可能にするのは日銀のQE縮小・QTではなく、国債発行残高の縮小だろう。
(ちなみに、日銀がバランスシートを膨張させたままだと、国庫納付金の減少を通して、結局財政の重荷になる。
預金準備率引き上げという乱暴なやり方もあるが、これは市中銀行への実質増税であり、そのしわ寄せは国民に及ぶ。)
市中に流通する国債が減れば、その分日銀はバランスシートを縮小できるし、それにより国債市場の需給が悪化することもない。
そうした観点から見ても、今回の佐々木氏の「長期金利も必要な分上がる」ことを覚悟すべきとの発言は実に当を得ている。
問題の本当の所在は金融政策ではなく、財政政策の側にある。
もちろん緊縮財政だけが道ではないが、積極財政を採用するなら、当然のコストを覚悟すべきなのだ。
もっとも、佐々木氏を含む出演者の政策に対する見通しは悲観的だ。
結局のところ、当局が正面からインフレ・円安を回避しようとすることはないと予想し、痛みを和らげるための投資行動が推奨されている。
