アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー氏が、FOMC利下げと米国株市場について1990年代後半を引きつつ慎重な考えを語っている。
同氏は2009年からの米市場の長期上昇を的確に予想し、その後の歴史的な強気相場は《テッパー・ラリー》と呼ばれた。
「市場はさらなる利下げ、おそらく2回を予想している。
さっき指標を見たとおり、経済が悪くない中で少なくともそれだけの利下げがある。」
テッパー氏がCNBCで、米国株市場の置かれた状況を語った。
同氏は自身のスタンスについて「利下げによって積極的だが(高い株価)水準のため悲嘆にも暮れている」と表現している。
米国では雇用こそ悪化が心配されているものの、経済は堅調だ。
景気後退を心配する声は少なくなり、米市場は最高値を試し続けている。
1990年代後半を引くまでもなく、景気が悪くない中で利下げをすれば市場が沸き立つことは想像に難くない。
テッパー氏は、こうした環境では株を持たざるをえないと話した。
それでも同氏は終始慎重な意見を語り、大きなファンドが容易にポジションを反転できないつらさを漏らしている。
「LTCMやY2Kの後、経済は悪くなかったが、市場は少しおかしくなった。
今の市場がおかしくなりつつあるとは言わないが、その向こう側には大惨事があった。
次の利下げは問題ない。・・・それ以上なら少し難しくなる。
2000-01年ほかのようにひどく醜い山の向こう側に行かないように気を付けないといけない。」
LTCMは1994年設立、ノーベル賞学者が複数参加したヘッジファンド。
当初数年は大成功を収めたが、1997年アジア通貨危機、1998年ロシア金融危機での読み違えから1999年に破綻している。
同破綻は世界の金融界に動揺を与え、FRBは金融不安払拭のために金融緩和を余儀なくされた。
これが新興国市場などから米市場への資金流入を引き起こし、2000年ドットコム・バブルの一因となったと言われている。
テッパー氏は、1-3回の利下げならばまだ金融政策は引き締め的(FF金利が中立金利より高い)なので大丈夫だろうという。
そこからさらに利下げされるようなら、ドル安・インフレ昂進などの問題が発生すると警戒している。
CME Fedwatch Toolによれば、市場が織り込む年末のFF金利誘導目標は350-375 bp(確率80%)。
17日の利下げを入れて3回が予想されている。
2026年末では300-325 bp(さらに2回)と275-300 bp(さらに3回)を中心とした分布となっている。
市場の織り込みが正しいなら、来年にはテッパー氏のいう「それ以上」に到達することになる。
1990年代終わりと韻を踏むなら、バブルとその崩壊を警戒すべきとなるのだろう。
一方、市場の織り込む利下げが過大となるなら、少なくとも短期金利が予想より高止まりすることとなり、市場に影響を及ぼすだろう。
テッパー氏は、現在の自身の考えを端的に語る:
私はFRBとは喧嘩しない。
少なくとも短期的にはね。