ハワード・マークス氏は、財政再建に反対する意見についても揶揄している。
「反論はいつも同じで、法案(大きな美しい法案)、特に減税が経済を刺激し、財政赤字と債務を対GDP比で縮小させるというもの。
公平に言って、この作戦はこれまでうまく行かなかったと思う。」
いずこも同じだ。
でもこれはまだ驚くほどの類似性ではない。
人類共通の傾向であり、例外主義の継続を主張する米国でも例外でないにすぎない。
むしろ驚いたのは年金・退職金など社会保障の問題について書かれたところだ。
マークス氏は、社会保障制度を持続可能にするための手段を6つ挙げている。
- 社会保障の税率の引き上げ
- 社会保障税の課税対象所得上限の引き上げ(今の上限は176千ドル(約25百万円超))
- 引退年齢の引き上げ
- 引退後支給の減額
- 物価スライドの縮小
- 審査を導入し、引退者の所得が上昇するにつれ給付を減額する
これは日本のことなんじゃないか、と思わせるほど、論点が日本と似通っている。
もちろん、社会保障の持続性を向上する手段はある程度万国共通なのだろうが、どうやら例外主義の国でも状況・切迫度は日本とそうは変わらないようだ。
今後(同盟国・先進国まで対象とした)移民政策を緩めないようなら、この問題はさらに先鋭になるのではないか。
マークス氏は、社会保障年金信託基金(米国の公的年金)が今後10年ほどで破綻すると予想している。
「個人的な話をしよう。
私が社会保障受給を始めたのは最も遅い70歳の時で、月4,612ドル(約668千円)受け取っている。
ばかげている:
私たち裕福なベビーブーマーに社会保険を支給すべきじゃない。
国家債務と同様、社会保障にかかわる問題は、子孫たちが対処しなければいけなくなる。
これは深刻な世代間の不公平であり、注目すべきなのにそうなっていない。」
貧すれば鈍するとはよく言ったもの。
若年層の中には、高齢者が得をして負担を若年層に付け回しているとの指摘をする人も多い。
まったくその通りだと思う。
ところが、その同じ人たちの中に、その解決として、負担を次の世代に付け回そうという意見を述べる人が少なくないのもまた悲しい現実のように見える。