ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、改善の見通しの立たない米財政問題について、債務危機発生の可能性を語っている。
私はこれまでこの診断プロセスを投資において用い、秘密にしてきた。
しかし、今や秘密にするにはあまりにも重大となったので『How Countries Go Broke: The Big Cycle』で詳細に説明することにした。
ダリオ氏が自身のSNSで、上梓したばかりの新著に込めた意図を説明した。
いつものことだが、同氏にとって著作の目的は本を売ることではなく、人々を啓蒙すること、自身の意見を伝えることにある。
ダリオ氏の危機感は強い。
今回のSNS記事は、なんと新著の主題を5分で読めるようにまとめたものになっている。
レイ・ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』草稿
では、ダリオ氏が築いた世界最大のヘッジファンド ブリッジウォーターで用いてきた「診断プロセス」とはどういうものなのか。
それは、債務の長期サイクルにおいて、政府債務が膨張し持続不可能になる状況を診断するためのプロセスだ。
同氏は、持続不可能となる理由を3つ挙げている:
1) (政府)利払い費が増え、許容不可能なほど他の歳出をクラウディング・アウトする。
2) 買ってもらわないといけない(政府)債務がその債務に対する需要と比べ大きくなりすぎ、金利が大幅に上昇し、それにより市場や経済が大きく低迷する。
あるいは
3) 金利上昇を許容して市場・経済を悪化させるのでなく、中央銀行が大量に貨幣を増発して大量の政府債務を購入して需要不足を補うことで、貨幣の価値が大きく低下する。
つまり、債務問題にうまく対処しないと、緊縮政策をとっても拡張的政策をとっても、持続不可能な状態に陥りかねないということだ。
そうなれば、どの道、貨幣と債務が十分に安くなるまで、債券のリターンは低下せざるを得ないという。
ここで言う十分とは《債務に魅力が戻るまで安くなる》かつ/または《政府が買い戻せるほど安くなる》または《政府が債務リストラできるほど安くなる》という意味だ。
ダリオ氏はこの投稿でも、日本を典型例として挙げている。
日本の場合、長年の財政支出で財政が悪化する中、低金利政策が取られ、事実上、国債の需給を均衡させるために量的緩和政策が採られた。
(あるいは、量的緩和によって国債の需給が低金利で均衡した。)
上記の3)が選択され、近年実際に円の価値が(円安とインフレという形で)大きく低下したのだ。
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