ふくおかFGの佐々木融氏が、為替介入による戻りも想定しつつ、年内1ドル165円ぐらいまでの円安を予想している。
「理想とする円の水準とは、みんながこれについてあまり議論しない水準だと思う。」
佐々木氏が外為どっとコムで「理想とされる円の水準」を訊かれて答えた。
老子にある「太上は下これ有るを知る」(最も理想的な指導者とは、人々がその存在を知っているだけで、何をやっているのかは知らない)を踏まえた考え方だろうか。
誰も議論をしないということは、みんなが満足できているという趣旨だろう。
長く為替相場を通して世界経済を見てきた佐々木氏からすれば、「為替レートとは実体経済を映す鏡」。
「誰も為替に対して嬉しくも悲しくもない水準」は、「購買力平価で見ると80円台」だという。
常に長期視線を意識している佐々木氏らしい相場感だ。
短期視線しか持たない人から見れば、1ドル80円はとても悲しい水準だろう。
(もちろん、その裏側には80円を嬉しく思う人たちも多く存在する。)
国際通貨研究所によれば、昨年12月のドル円の購買力平価は実勢為替レート157.92円を大きく下回っている。
用いる物価別で見ると
消費者物価: 108.48円
企業物価: 93.02円
輸出物価: 64.40円
これらのレートで換算すると内外の価格が均衡するという意味合いだ。
為替レートの決定要因としては
短期: 金利差
中期: 国際収支
長期: 内外物価差
とされているから、長期目線で購買力平価を用いるのは自然な考えなのだろう。
円の実質実効為替レートを見れば、いかに現在の円安が極端なものであるかわかる。
ドル円レート(黒、左)と実質実効為替レート(赤、右)

1980年代のバブルの頃までは、名目レートと実質実効為替レートは付かず離れず似た動きをしてきた。
バブル期の円安、その後1995年頃の円高の後、長いディスインフレ/デフレの時代、名目レートと実質レートは大きく乖離していく。
実質実効為替レートは、1970年頃の水準まで円安に戻っている。
これだけを見れば、高度成長を遂げて世界第2位になった日本が、再び途上国に先祖返りしたかのようにさえ見える。
この先祖返りを打ち消すには、円が倍程度に強くなる必要があることになる。
もちろん急に1ドル80円代まで戻せば大混乱になる。
それは110円から160円になった時に皆が苦しんだのと同じこと。
一方で、内外の物価や賃金の大きな差が様々な歪み・不満を生み出すことを考えれば、長期的に購買力平価の水準を「理想」とするのは理に適ったことなのだろう。
佐々木氏は購買力平価による「1ドル80円台」を「本来あるべき水準」、「本当に日本経済にとってよい水準」と語っている。
逆に、現在の円安は「異常すぎる」とも述べている。
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