生活者の実感からは乖離しているかもしれないが、例えば5%以下のインフレをマイルドなインフレと呼ぶなら、マイルドなインフレが名目リターンに良い影響を及ぼすのはコンセンサスと言えるだろう。
実質リターンで見ても、プラスとなるのかもしれない。
しかし、さらにインフレ率が高まっていくと話が変わってくる。
中央銀行(さらには財政当局)が本気でインフレ退治に乗り出さなければならなくなるためだ。
金融引き締め・緊縮財政となれば、これはインフレ率とともに資産価格を下押しする。
ディスインフレの時代はゴルディロックスの時代だった。
インフレが極めて低く、インフレ率の上昇が善とされる時代だった。
過熱がなかったから、経済成長やインフレが上向けば皆が喜んだ。
仮に下向けば金融・財政面での支援を当て込んで、やっぱり皆が喜ぶ始末だった。
結果、景気・市場サイクルが循環せず、ざっくり言って長く長く拡大期が続くこととなった。
近年インフレ率の居所が上にシフトしたことで、インフレが悪とされる時代になった。
しかも、経済はすっかり拡張的政策に慣れ切っている。
景気・市場サイクルはいつまでも拡大一方ではないだろう。
少なくとも実質ベースでは・・・
60/40ポートフォリオは、株式と債券の逆相関を前提とした戦略だ。
株式が下がれば債券が上がり、株式が上がれば債券が下がるのなら、これらでバランス型ポートフォリオを組むことで自然と長期のスイング・トレードのおまけまでついてくる。
長期投資の果実だけでなく、おまけまで取れてきたのだ。
しかし、高インフレの時代には、株式と債券が正の相関となりうる。
インフレ昂進>利上げ・金利上昇(≒債券価格下落)>リスク資産価格下落、といった連想が強まる。
(関連記事: 原油高が分散投資を難しくする:モルガンスタンレー)
インフレがマイルドな領域を超えて上昇する場合、名目債はもちろん、株式でも実質リターンがマイナスになってしまうことがある。
分散効果が効かないだけでなく、いずれの資産クラスでもそもそも実質リターンが得られなくなる。
ダリオ氏はあらためて投資家に警告している:
経済サイクルや債務危機を予想する、バックテスト済みのゲームプランなしには、準備ができているとはいえない。
もちろん現在、経済サイクルが下向いたり、債務危機に陥ったりするのが確実であるわけではない。
しかし、それらに先行するインフレという原材料はいつになく高まっている。
少なくとも長期投資家、あるいは今後ある程度の年数を生きる可能性のある人は、ダリオ氏のいう「準備」を考えてみるべきなのだろう。
