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バイロン・ウィーンのオールタイムびっくり10大予想

ブラックストーンのジョー・ザイドル氏らが、昨年逝去されたバイロン・ウィーン氏の「びっくり10大予想」について1986年以降、全38回でのベストびっくり10大予想を選び、紹介している。


先月12月19日付の投資家向け書簡において、ザイドル氏は通例どおり年初に発表した「びっくり10大予想」答え合わせをしている。
それも興味深いが、答え合わせの後に付された《オールタイムびっくり10大予想》の方を紹介したい。

1986年-1: 長期債(利回り)は8%へ
勘違いしないでほしい。
上がると予想したのではなく、下がると予想したのだ。
時はプラザ合意の翌年。
年初に9.6%まで上昇した30年債利回りが7.1%まで低下した。

1999年-10: 2000年メルトダウンはデマ
いわゆる2000年問題、Y2K問題は空騒ぎだった。
ならばと米市場はドットコム・バブルを完成させることになる。

2000年-4: インターネットがついに陥落
いうまでもなく、メッキが剥がれてバブルは崩壊した。

2001年-7: バリューや中小型株がアウトパフォーム
重要なのはドットコム銘柄の不振だけではなかった。
ウィーン氏は2つの著名大企業の破綻まで予想していた。

2008年-10: オバマ大統領誕生

2009年-1: S&P 500が1,200まで上昇
この大予想が発表されたのはリーマン危機の直後。
市場が阿鼻叫喚を極める中で、ウィーン氏は反転を予想。
(S&Pは23%上昇したが、年末終値は1,115と予想に届かなかった。)
市場は同年2-3月に底を打ち、長期強気相場が始まった。

2012年-1: シェール開発で輸入依存が減り原油価格が低下

2014年-3: 米経済の相対的強さからユーロドル1.25ドル、ドル円120円のドル高に
当時、日本ではまだアベノミクスを持ち上げる風潮にあったが、ウィーン氏が着目したのは、米経済の日欧経済に対する相対的強さ。
実は、同年の4つ目の予想はアベノミクスに否定的な予想となっている。

2018年-3: 米経済回復とプロビジネスの政策でドルが息を吹き返す

2022年-8: 原子力発電が見直される
ウィーン氏は温暖化対策の遅れを心配し、現実的なミックスを訴えた。

こう見返してみると、ウィーン氏は大きな転換点を「びっくり大予想」という肩の凝らない名称で果敢に言い当てようとしてきたことがうかがわれる。
もちろん外れたことも多かったはずだが、「びっくり」というには的中することが多かった。
「2023年びっくり10大予想」での注目点は4つ目の予想:

FRBの引き締めにもかかわらず、市場は年央までに底を打ち、2009年に匹敵する回復を始める。

2023年については的中したわけだ。
答え合わせで共著者のザイドル氏はこう書いている:

「バリュエーションに対する私の懐疑心は高まりつつあるが、それでもこの結果を認めざるをえない。」

ザイドル氏も、この予想がやや強すぎると感じていたのかもしれない。

FPでは度々ウィーン氏について《健全な楽観》を持つ人と紹介してきた。
隠さず弱気材料を山ほど紹介しても、結論は強気であったりする。
材料と結論の間に絶妙な経験知が機能している人だった。
弱気材料も提示するからこそ、聞き手は知的な結論を下せたのだろう。

さて、10年後、2023年の4つ目の大予想は的中しているだろうか。
この予想に対する長期投資家の興味はこれからも続く。

この数年ウィーン氏とともに「びっくり10大予想」を作成してきたザイドル氏は、書簡で、同予想の今後について率直な気持ちを語っている。
今年以降はウィーン氏の教え通り「よりよくあろうとするな。違うものになれ」を実践。
今月異なるフォーマットで今年の主要テーマを発表する予定だという。


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