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【短信】ケネス・ロゴフ:危機が起こるまで財政再建は困難

米国は過去数十年で一度財政を均衡させたことがある。
1998-2001年度、クリントン政権下だった。
(もちろんITブーム/バブルの恩恵もあったのだろう。)
ところがブッシュ政権以降は再び慢性的な財政赤字に戻ることになる。


ロゴフ教授はBloombergで、その原因を語っている。

いくつかの大惨事(世界金融危機やパンデミック)もあったが、もっと大きかったのは、このシンポジウム(ジャクソンホール)で長年の間、経済学者の論文における宗教に近い確信を大きな話題としてきたことだ。
その確信とは、金利が下がり続けるというもの。
結果、(多額の)金利を払う必要がないと考え、誰も債務について気にしなくなった。
それが政治を支配する見方だった。
金利は反転したが、ワシントンや学界は反転していない。

ロゴフ教授は、今後も金利上昇要因は少なからず続くと心配する。
しかし、国民や政治家の反応は鈍い。

「ついに一部の経済学者が、過去言ってきたようなフリーランチではないかもしれない、インフレや金融抑圧が起こるかもしれないと考えを変え始めたが、それは政治において支配的とはなっていない。」

国民が財政拡張を求め、政治家はそれにおもねる。
一方で、米社会保障の破綻など、もはや先送りできないデッドラインも近づいてくる。

チェスのグランドマスター(世界最高位)でもあるロゴフ教授は、結局のところ危機が起こり、痛みが走らない限り、世論や政治は動かないと予想する。
これまで、財政の持続性の確保を主張し続け、多くの批判を浴び続けてきたゆえの諦観であろう。
教授は、米債務が「すでに困難」な水準に達しているとし、「経済の回復力が乏しい時期に何らかのショックが走る時、危機が起こる」と予想した。

最も起こりそうなのは中国と台湾の情勢だろう。
戦争のようなショックは、金利押し上げのシナリオになる。
そうなってしまうと、市場が金利を押し上げ、FRBが利下げできなくなる。
市場が金利を押し上げると、政府は貨幣増発もできなくなる。

現在の米大統領はショックを発生させる天才だ。
次のショックがインフレ/金利上昇の方向のショックでなく、デフレ/金利低下の方向のショックであることを祈ろう。
もっとも、最近の市場を見ていると、どんなショックが走っても経済・市場が前者で反応したがるかもしれないと思えてくる。

ロゴフ教授は、米政府が対処を始めるべきとし、早ければ早いほど対応は小さく容易なもので済むだろうと主張する。
その一方で、現時点では財政再建を世論が許さない状況にあり、それが世界的な潮流になっていると悲しんだ。

最後に、ハーバード大経済学部では高インフレが問題になっているのかとの質問を受けている。
ここで言う高インフレとは、成績グレードのインフレである。
ロゴフ教授は、近々対応策が講じられる予定と述べた上で、自身の経験を語った。

「間違いなく高インフレだった。
私がハーバードに着任した時、学部長から成績評価が甘すぎると文句を言われた。
何も変えなかったが、20年以上経って、ハーバードで最も評価の厳しい先生と学生から言われた。
…公正で、合理的に率直であろうとしただけなんだ。」

人は易きに流れやすく、インフレ好きなのだろう。

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