ジェレミー・シーゲル教授が、米雇用統計とFRB金融政策を解説するとともに、通商交渉の要点についても言及している。
5日発表の8月の米雇用統計は
- 非農業部門雇用者数前月比: +22千人(市場予想は+75千人)
- 失業率: 4.3%(市場予想どおり。前月比+0.1%ポイント)
と、雇用者数の悪化が顕著となった。
「現時点で内訳まで見て(雇用者数は)弱い。
崩壊ではない。」
シーゲル教授は、こうウィズダムツリーのポッドキャストで総括している。
シーゲル教授は、先物市場がこの結果を受けて今後3回のFOMCで25 bpずつの利下げを織り込んだと指摘している。
5日の米市場は株式が小幅に下落し、債券が長短ともに買われた。
教授は、9月の25 bp利下げが確実になったと述べているが、50 bpについてはなお懐疑的。
以前から、雇用者数が純減なら50 bpと予想していた。
シーゲル教授は米国株市場について強気を継続している。
「いくらか上昇を予想しており、小型株はFRB利下げ期待との連動が高くなっている。
株式の強気局面は、利下げにより、まだ継続している。」
「崩壊ではない」とは言え、予想以上の雇用の悪化でも株高とは、やや奇妙な感もある。
ただし、米景気は減速しているものの後退はしていない。
そこで利下げが再開するとなれば、株高を予想することになるのだろう。
ポッドキャストの中で、シーゲル教授は、米中の関税交渉の文書化について触れている。
教授は、日本による巨額の対米投資の約束について、自身の解釈を述べている。
「みんなが理解すべきなのは、基本的に(この投資資金が)日本が保有する米国債ポートフォリオから来るということだ。
これは米国に対するアウトライトの補助金ではない。」
教授がなぜこの話題に触れたのかは語られていないが、日本による投資が米国にとってさほど素晴らしい話ではないと言いたいのだろう。
新規のドル投資・対米投資ではなく米国債投資からの振り替えとの解釈(マクロ的には実際にそれに近くなる)であり、ドルや米国債にプラスになるとは限らないと暗示したものと思われる。
さらに、日本にとっても悪い話ではないと示唆している。
「いずれにせよ日本はポートフォリオを多様化したいのだろう。
米国債が世界で最も素晴らしい投資先ではなく、良好な国債ではあろうが、素晴らしくはない。
だから米国内での融資保証や製造という話になり、それは良いことだ。」
シーゲル教授は、従前から不確定要素の筆頭に関税影響を挙げている。
その結果が明らかにならないうちでも強気を続ける理由にも言及している。
「注目に値することだが、これまでのところ(関税に対する)報復が見られない。」
当初の中国からの報復以外、世界から報復の声が上がらないことが、シーゲル教授の楽観を後押ししているようだ。
確かに世界は、これまで謳ってきた理想をあっさりと引っ込め、無理難題を押し付ける米国に恭順の意を示すことを選んでいるように見える。