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【メモ】バフェット指標の限界
2020年2月22日

その国の株式市場の割高・割安を議論するのにバフェット指標(バフェット指数)を持ち出す人を見かける度に思うことがある。(浜町SCI)


バフェット指標とは株式市場全体の時価総額を名目GDPで割った商として定義される。
経済成長に比べ株価上昇のペースが高いほど、この指標は上昇し、割高感が高いとされる。
このロジックで、株価が高い・低いと議論する人が世の中には存在する。

容易に気づくように、このロジックには理論的整合性がない。
GDPとは企業だけでなく労働者なども含め分配される付加価値の合計額だ。
株価だけをGDPと比べることは、やや遠いもの同士を比較する感がある。
それでも、これについては、比較しないより比較した方がいいのかもしれない。
不完全ながらも、何らかのメッセージが得られる可能性はある。

もっと深刻な不整合は地理的なものだ。
日本のバフェット指標を計算する時には、日本市場の時価総額を日本の名目GDPで割ることになる。
分子の「日本市場」とは、日本で上場する企業の株式の集合体であり、ざっくり言って日本企業の集まりだ。
分母の名目GDPは、言うまでもなく国内で生産された付加価値の合計である。
問題は、日本企業が稼いでいるのが日本国内だけではないということだ。
特に製造業では海外で稼ぐ部分がどんどん大きくなっている。
つまり、分子に国際化された日本企業の集まりを用いるなら、分母の名目GDPも日本だけでなく関係諸国の重み付きミックスでないといけないことになる。
この計算はなかなか複雑怪奇な手順になる。
つまり、この指標は論理的に正しい方法で計算するのがほぼ不可能、あるいは現実的でないことになる。

この点は市場関係者の間ではよく知られた事実だ。
ジェレミー・シーゲル教授も、現状の定義でのバフェット指標について「市場バリュエーションを語る上で良い長期的指標ではない」と結論付けている。

バフェット指標は、確かに株価が割高になることでも上昇するだろう。
しかし、国内企業が海外事業で多く稼ぐことでも上昇しうる。
(ついでに言えば、労働分配が減り、資本への分配が増えることでも上昇しうる。)
だから、メッセージがあいまいになってしまうのだ。
短期的な割高・割安であれば、短期的な(PER等)バリュエーションの上下を見ればよいので、そもそもバフェット指標を用いるまでもない。
ちなみに、PERやCAPEは分子(株価≒企業)も分母(企業収益)も国際化されており、そこに不整合はない。

長くなったが、実は以上は前置きにすぎない。
長くなりすぎたので、バフェット指標を見かけるたびに筆者が思うことは、次回に譲りたい。




山田泰史山田 泰史 横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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