海外経済 投資

ウォール街 【グラフ】FRB利上げと米国株市場の弱気相場入り
2021年8月29日

以前、FRBテーパリングと金融市場の関係について過去のデータをレビューした。
テーパリング開始が確実視されつつある今、その先にあるFF金利引き上げと米国株市場の関係をレビューしておこう。(浜町SCI)


テーパータントラムはこれでおしまい。

26-27日のジャクソンホール会議と市場の反応を受け、グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏がツイートしている。
一部にテーパータントラムを心配する向きもあったが、結果は無風。
むしろ、市場はポジティブに捉えたようだ。
パウエルFRB議長は年内テーパリング開始を匂わせたが、それでも十分にハト派的と受け取られたのだろう。

すでに市場は一度テーパリングを経験していることもあり、今回のテーパリングについてテーパータントラム再発を予想する人は少なかった。
ただし、それとは別に、よく知られたアノマリーから市場の夏枯れを予想する人は少なくなかった。
マイナード氏もその1人。
9-10月に15%+下げるかもしれないと言っていた。
今回、同氏はこの予想については言及していない。
ただ、重要イベントを1つ通過したのは事実だろう。

数か月の誤差があるにせよ、テーパリングが始まるのなら、次の関心は利上げだ。
前回のサイクルでは、テーパリング開始から利上げ開始まで2年弱空いていた。
利上げはまだ先の話のように聞こえるが、では、利上げと株式市場の関係はどうなっているのか。
過去の弱気相場(概ね20%超の下げ)を中心にレビューする。

過去35年の利上げと米市場

Wilshire 500指数(赤、左)とFF金利上限(青、右)2019年前後
Wilshire 500指数(赤、左)とFF金利上限(青、右)2019年前後

まず、2020年のパンデミックにともなう弱気相場または調整だが、これは金融政策と直接関係したものとはいえない。
2018年の大きめの調整については、利上げが一因ともとれる。
ここで重要なのは、利上げがある程度(3年で2.25%)進んだところで起こっている点だ。

Wilshire 500指数(赤、左)とFF金利(青、右)1995-2009年
Wilshire 500指数(赤、左)とFF金利(青、右)1995-2009年

リーマン危機、ドットコム・バブル崩壊は、利上げ終了後に始まっている。
(ドットコム・バブルはほぼ同時。)
1995年前後の利上げは「根拠なき熱狂」の中で弱気相場を生まなかった。

Wilshire 500指数(赤、左)とFF金利(青、右)1983-1993年
Wilshire 500指数(赤、左)とFF金利(青、右)1983-1993年

1987年のブラックマンデーも1990年の調整も利上げプロセスと同期したものには見えない。
関係しているとすれば、かなりのタイム・ラグをともなって市場の下げが起こったことになる。

35年ほど遡って見受けられることは何か。
コロナ・ショックという明らかな例外を除けば、米市場の弱気相場入りは、FF金利引き上げが相当に進んだ後、あるいは終了後に起こったということだ。
中には目立った調整さえ起こさなかった利上げサイクルもあった。

この事実は強気派を勢いづかせる。
前回に似たスケジュールになるのなら、利上げ開始まではまだ2年ほどある。
前回に似たスケジュールになるのなら、利上げ頓挫はそこから3年だ。
まだまだ強気相場が続く可能性がある。
さすがに強気派でもあと5年続くと言えば心配になるだろうが、先例を見る限り、少なくともしばらくは強気でい続けるべきかもしれない。

2つのリスク・シナリオ

ただし、何事にもリスクはある。
今回の場合(夏のアノマリーを別として)2つの要因を考慮すべきだ。
1つは、現在がパンデミックを脱しようとしている極めて特殊なケースであること。
これがどう転ぶかは予想が難しい。

もう1つは、パンデミックとも関連して、インフレや金利の趨勢に変化が起こる可能性だ。
上記でレビューした35年はボルカー・ショック後の事例だ。
少なからぬ人が心配するインフレ時代が到来するなら、ボルカー・ショック前の世界もレビューする必要が出てくる。

Wilshire 500指数(赤、左)と実効FF金利(青、右)1970-1984年
Wilshire 500指数(赤、左)と実効FF金利(青、右)1970-1984年

インフレと戦っていた時代、株価が利上げ後に遅れて下落するという話は通用しないようだ。
株価など構っている余裕もなく、インフレ抑制のためにFF金利を操作していたのだろう。
1970年代は極端な例だと信じたいが、仮にインフレが不快なレンジに留まるようなら、FRBは資産効果よりインフレ抑制を優先するようになるかもしれない。

もちろん長い間にはFRBの政策手段の中での優先順位に変化もあったから、FF金利だけを見て株価を占うのは十分でない。
とはいえ、強気の理由を1つ1つ理解・精査し、その限界を知っておくことは役に立つのではないか。


-海外経済, 投資
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。