IBMのアービンド・クリシュナCEOがAI投資の回収可能性についてコメントした。
ここではその濃淡について注目したい。
ポッドキャストDecoderで「現在はAIバブルか」と尋ねられ、クリシュナ氏は「No」と答えている。
しかし、その答より、その後の続きの方がもっと重要だ:
何か入れ替えが起こり、投じられた資本、特に負債資本(訳注:融資や債券)の一部が返済されずに終わるかといえば、Yesだ。
クリシュナ氏は、今後のAI市場のうちB2C市場での競争を次のように定義している:
「これは、誰が世界の75億人超のうち最も多くを自社のモデルの利用者にできるかのレースだ。
次の賭けはネットワークの規模になり、その規模の経済が成功を生むことになるからだ。」
クリシュナ氏は、2000年インターネット・バブルにおける光ファイバー網での競争との類推から、仮に10社がこのレースに参加した場合、最終的な勝者は2-3社のみになると予想する。
ただし、敗退した参加者の構築したレガシーが無駄になるわけではないとも言い添えている。
資本主義の機能により、敗者の資産は大幅にディスカウントされ、新たなオーナーにより利用されるという。
現状のAI投資の結末について同氏はこう予想している:
「2-3社が大金を稼ぎ、その他は儲けない。
投じられた株式出資はリターンを上げ、負債資本の一部は上げないだろう。」
クリシュナ氏は、なぜ株式出資がリターンを上げるのかについては詳述していない。
考えられる解釈は2つ:
- 株式にはアップサイドがあるので、最終的に紙切れになる株式についても、それが確実になるまでリターンを得るチャンスがある。
- 2-3社の株式リターンが莫大なため、株式出資全体でリターンが上がる。
いずれにせよ、アップサイドの乏しい負債資本に損失が偏るとの見立てだ。
本来なら相対的に安全なはずの負債資本で分が悪くなるとは皮肉な構図だ。
潰しあいに似た競合状況へのハイリスクの投資には、負債資本は向かないということだろう。
クリシュナ氏は、足下で進行中のAI投資について、目の子計算での実現性チェックを披露している。
「1ギガワットのデータセンターを完備するには約800億ドルかかる。・・・
先に言った通り、これを(償却期間の)5年で全稼働しないといけない。・・・
世界のこの分野、汎用人工知能の構築のすべての計画を見ると、公表された総額は100ギガワットほどで、これは8兆ドルの設備投資になる。
私は、これに対するリターンは得られないと考えている。
金利を払うだけでも、8兆ドルの設備投資には約8,000億ドルの利益が必要になるからだ。」
