モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏が、米経済の過熱とインフレの再加速を予想し、その恩恵が低クォリティのシクリカル銘柄にまで広がると予想している。
先述のとおり、FRBが2%目標を無視しないまでも過熱を容認することを債券市場が受け入れるかどうかはまだわからない。
私たちは最終的に、FRBが過熱を容認せざるをえず、容認すると考えている。
債務問題の解決のチャンスを得るために必要だからだ。
ウィルソン氏が自社ポッドキャストで、米金融政策の方向性について語った。
雇用の悪化に加え、米政府財政という制約から、FRBが2%インフレ目標の達成を優先しないとの予想だ。
結果、利下げは進むものの、長期金利には上昇圧力が加わるとのシナリオになる。
同氏は、長期金利が4.5%以上に戻れば株式に悪影響が及ぶと予想するものの、現状(4.1%前後)では問題にはならないとしている。
ウィルソン氏はインフレ再加速を予想しており、このインフレが(コロナ後と同様)企業収益と株価に追い風になるという。
「インフレが加速している時、それは(売り手の)価格決定力がかなり良好である兆しである。
そして、実際に幅広い企業利益(の向上)が見られる。」
ウィルソン氏は、過去3年間企業利益が停滞したことでペントアップ需要が蓄積していること、インフレ再加速が予想されることを根拠に、今後の企業利益について強気の予想を述べている。
「私たちの今後12か月の予想は、株価倍率やFRBに関するものとはあまり関係なく、企業利益が予想を上回るということだ。」
さらに、心配されている高い株価倍率、換言すれば小さな株式リスクプレミアムが容認される理由を2つ挙げている。
- インフレ加速のヘッジのため株式が選好される。
- 実質長期金利がまだ高いため、リスクプレミアムが小さくても出来上がりの利回りがそこそこに見える。
ウィルソン氏は従前、米経済が4月までの3年間「ローリング景気後退」を進行させてきたと主張していた。
「ローリング景気後退」とは、経済の部分ごとに入れ替わり景気が後退することを指したものだった。
それが4月の「解放の日」による悪材料出尽くしを境に「ローリング回復」に転じたと主張している。
最近、米小型株の好調が指摘されることが多いが、ウィルソン氏によればこれも「回復」への転換、「ローリング」による上昇銘柄の広がりの一端だ。
同氏は、FRBが雇用の回復を優先し経済の過熱を容認せざるをえないと読み、小型株をはじめとしたシクリカル銘柄の回復がまだ途上にあると予想した。