シカゴマーカンタイル取引所をはじめいくつもの主要デリバティブ取引所を運営するCMEグループが、円キャリートレードの巻き戻しのリスクを注意喚起している。
わずか1分半のビデオだけに重要なポイントだけを述べた単純明快なメッセージになっている。
ビデオでは、投資資金を円で調達し利回りの良い(と思われる)ドル資産で運用する円キャリーが盛んだった理由、起こりつつある変化を端的に解説している。
- 日米長期金利差: 2022-25年まで300 bpと大きかったが、185 bpまで縮小。
- 米国株市場: テック株・AI株が好調だったが、最近は減速気味。
これだけ指摘すれば、巻き戻しのリスクが高まっていることは明白だと言わんばかりだ。
2024年8月初めにも一瞬だったが急激な巻き戻しがあった。
これを振り返っておこう。
2024年のドル円相場(青、左)とS&P 500(緑、右)
ドル円(青)は7月初旬にピークを打ち円安へ転じている。
日銀は同年3月に初回、7月末に2回目の利上げを行っている。
S&P 500(緑)は7月中旬にピークを打ち下落に転じていた。
当時は、米景気の悪化懸念が高まっていた時期だった。
これらが相まって、特に8月初めに急激な円高が進み、同時に世界のリスク資産市場が急落した。
その後、米国株は比較的速やかにケロリと上昇に転じたが、ドル円は9月まで円高ドル安が続いている。
円キャリーと(主に米国株についての)リスクオンの関係は単純な相関関係ではない。
円キャリーがリスクオンを後押しする側面もあるし、リスクオンが円キャリーを誘因する側面もある。
それだけに巻き戻しが起こると急激になりがちだ。
2024年の場合、円キャリーを主因とする意見とそうでない意見が存在したが、仮に主因でなくとも大きな一因ではあったのだろう。
2024年と現在の違いは何だろう。
まず、現在の米経済に当時ほどの懸念は存在しない。
市場も、ローテーションが進行しているとは言え、全体で見ればまだ堅調だ。
為替についても、米政府がレートチェックしたり、日本政府が強弁したりしても、まだ円高ドル安方向に切り返したかどうかははっきりしない。
CMEはまだリスクを注意喚起しているだけとも受け取れる。
ただし、多くの人がそういうシナリオを忘れられずにいるのは事実だろう。
もっとも、日本側の状況はかなり変わっている。
再び円キャリーが巻き戻した時、日本人が2024年ほどうろたえるか否かは定かではない。
市場や経済が痛手を受けるなら悲しむだろうが、為替については喜ぶ人も多いのかもしれない。
