オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、自身が理事に名を連ねる教会での8月の講演で、投資にかかわる税金について触れている。
マークス氏は講演の中で、投資のリスクについて一般の参加者に対して説明した。
「あなたが何のリスクも取りたくないなら、米国債を買いなさい。
あなたが米国債を買うなら、年4%のリターンが得られるが、その代わりに半分が税金で取られ、ネットで年2%になる。」
少し驚くのは、年4%という利回り。
これは米1年債利回りを指したもののようだが、8月には4%前後だった。
今では4.50%前後であり、米金利はこの2か月ほどで短期・長期ともに50bpほど上昇したことになる。
そして、もっと驚くのは、アメリカ人は国債のクーポンに対し約半分を税金で持っていかれると話していること。
これには注意がいる。
連邦所得税における利子課税は他の所得と通算され10-37%の税率で課税されるようだ(州税・地方税は原則非課税)。
ただし、高所得者には純投資所得税が3.8%かかる。
それでも「半分が税金」というのはやや不正確で、高所得者の場合、4割以上が税金で取られるという方が正確であるようだ。
そうだとしても、日本の現時点での分離課税の税率からすれば2倍程度の負担ということになる。
マークス氏は「半分が税金」について、ニューヨーク州(そして自身の場合)を念頭に置いて話したようだ。
同氏によれば、ニューヨーク州の場合、利子が50%、株式のキャピタルゲインが33%、税金が取られると言う。
これに比べると(もちろんブラケットの違いはあるにせよ)日本のお金持ちは恵まれているようにさえ感じてしまう。
マークス氏は昨年もこの教会で講演している。
昨年との違いは、特に質疑において社会・政治の話題が多かったこと。
米財政の悪化や中間選挙の年であるためだろうか。
マークス氏は今年の講演の中で、社会主義は精勤へのインセンティブを削ぐとして反対の立場を明言している。
その一方で、所得や富の分配の不公平・格差については、累進課税による対処を支持していると話した。
お年を召した人の話は興味深い。
昔こうだったから今もそうでなければいけないという話ではもちろんないが、今を生きて最近の記憶ばかりが強く残っている自分の感覚が全く普遍的でないことを思い起こさせてくれる。
マークス氏は、米国における納税の実際を話している。
「私が知る限り、米経済で(所得が)下位半分の人たちは税金を納めておらず、上位10%の人たちが全体の納税額の半分を支払っている。
つまり、米課税制度はとても累進的だ。…
ただ、それでも累進性が足りないのだ。
節税の抜け穴があり、私は、すべての所得は基本的に等しく課税されるべきと考えている。…
しかし、もっと累進性を高めても良い。
現在の最高税率は40-43%だが、私が子供だった頃は92%だった。」
マークス氏は、20世紀後半を「人間にとって最高の時代」だったと話す。
急速な経済成長やグローバル化が「すべてのボートを持ち上げた」とし、社会のほとんどの層が恩恵を受けたと説明した。
「60年前は学位を持たない人が工場に職を得て、共稼ぎせずともよい暮らしをし、3LDKの家と車を持ち、フロリダで休暇を過ごし、子供たちを大学に行かせることができた。
私の一家のことだ。
今はそうはいかない。…
お金や教育のある人がはるかに良い生活をし、そうでない人ははるかに悪い生活だ。
不幸なことで、直すのが難しい。
簡単に直すとすれば、累進課税を強化することだが、みんな『それは共産主義であり、所得の再分配であり、それはやらない』と言う。
その場合、問題は解決しない。」
