BNPパリバの河野龍太郎氏が、日本経済を低迷に陥れた「合成の誤謬」について語っている。
「企業経営者は『日本は人口減少で売上が増えないので海外に投資する』と言うが・・・時間あたり生産性は(過去30年で)3割も上がったのだから、人口減少の影響はオフセットできている。
日本の消費低迷の理由は明らかで、賃金を上げていないから消費が増えない。」
河野氏がプレジデントのインタビューで、日本経済の長期停滞の真因について語っている。
上記は、日本企業が国内より海外に投資してきたことへのコメントだ。
近年の河野氏の考えがよく伝わってくるインタビューになっている。
正統的な理論に即した議論が進められており、読者自身での視聴をお奨めしたい:
前編)生産性3割増なのに賃上げはゼロ/「儲け」はどこへ消えた?
後編)円安はもう止まらないのか?/円の実力は1970年代にまで落ちた
また、次の2冊の書籍も秀逸であり、お奨めしたい:
日本経済の死角(リンクは書評)
世界経済の死角(河野氏と唐鎌大輔氏による対談)(リンクはAmazon)
内閣府によれば、2024年度のGDP(支出側)に占める家計最終消費支出(個人消費)は51.2%。
(財貨・サービスの輸出は22.0%。)
GDPの過半を占める個人消費を安定的に増やすには、やはり賃金の上昇が重要だ。
ところが、これまで日本では政府も企業も外需に重点を置く向きが多かった。
実質賃金が伸びないから家計の購買力が増えず、近年の高インフレで消費破壊さえ進みつつある。
河野氏はさかんに30年で3割の時間当たり生産性上昇があった点を強調する。
この生産性上昇分を労働へ分配していたなら、企業へのコスト増にはならず、労働者の賃金は上昇していたはずだ。
国内労働者の賃金が上がるということは、国内のお客さんの財布が大きくなることを意味する。
現実には、賃金は十分に引き上げられることがなく、国内のお客さんの財布は大きくならなかった。
消費が増えないから、企業の国内売上が増えない。
国内売上が増えないから、国内で投資しても採算が取れず、海外投資ばかりになる。
合成の誤謬が起こっている。
日本企業が全体で賃金を上げなかったために、国内市場が低迷してしまった。
個々の企業の判断としては妥当だったかもしれないが、それが全体として国内市場を低迷させた。
さらにそれが外需偏重を引き起こし、なおさら国内が低迷した。
河野氏の議論は、とても明快な算数に基づく議論だ。
GDPの5割に当たる顧客層を貧しくし、2割の顧客層に過度に集中してきたことの弊害が続いている。
国内の消費社会が豊かでなければ(貧困ビジネスのようなものを除いて)新たな価値を提案するような産業はなかなか生まれてこない。
その結果、他の国と同じようなものを作り、熾烈な競争を続けるなら、結局は安売りばかりが優先される政策・戦略が選択されてしまうのではないか。
