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ジム・チャノスが今年イチオシと絶賛! モルスタのSpaceXレポート

ジム・チャノス氏が7月上旬にして早々と、ある株式レポートを今年の傑作と称賛している。


「まだ年の半ばなのはわかっているが、今週SpaceXのIPO引受証券の1社から出された、義務的な買い推奨レポートにあるこのコメントを超えるものが出て来るのはかなり難しい。
本当に素晴らしい。」

チャノス氏が8日、いつものように皮肉たっぷりのツイートをした。

少し解説しておこう。
チャノス氏が紹介したのは、SpaceXのIPOで共同引受人を務めたモルガン・スタンレーによるレポートだ。
同社アダム・ジョナス氏は7日付レポートでSpaceX株について、Overweight(買い)、目標株価300ドルでカバーを開始した。
公開価格は135ドル、初値は150ドル、レポートの前日6日の同株終値は160.42ドル。
目標株価は前日終値より87%上昇した水準という計算になる。
チャノス氏が「義務的な買い推奨」と書いたのは、引受人を務めた以上は買いを推奨せざるをえない、との趣旨だろう。

チャノス氏はSpaceXがIPOを果たした6月12日、PSRが100倍を超えている点を指摘し、同株への投資の危うさを示唆していた。
Starlink事業を「ちゃんとした事業」と評価する一方、xAI事業は「夢と希望」と表現していた。
合わせて、こうした大型IPOが続く場合、市場が弱くなる傾向を指摘していた。

今回チャノス氏がイチオシした「コメント」は、ジョナス氏が買い推奨のレポート内で指摘した「調達リスク」の部分だ。

「『私たちは、2035年以前にフリーキャッシュフローがプラスになるとは予想しておらず、2027年から2034年に年平均840億ドルの外部資本の需要が発生すると見ている。
もしも債務市場がこの調達需要を吸収できない場合、SpaceXは株式の発行、成長投資の削減、事業展開の鈍化を迫られるかもしれない。』」

840億ドル(約13.5兆円)というのはSpaceX 1社の年あたり必要資金調達額である。
たとえば、マイクロソフトの時価総額2.86兆ドルと比べると、約3割に当たる。
時価総額はストックの数字だが、必要資金調達額は1年あたりのフローの数字だ。

もはやマクロの数字並みの水準にあり、イメージするのが難しい。
いくつかマクロの数字を紹介すると

  • 米名目GDPの2026年予想(予算教書): 32.5兆ドル
  • 米連邦債務残高(8日時点、米財務省): 39.4兆ドル

つまり、年840億ドルは
 名目GDPの2.5%
 連邦債務の2.1%
に当たる。

少し経済学を知る人なら、すぐにクラウディング・アウトという言葉を想起するのではないか。
ただでさえ米財政は厳しい状況にあり、債務増が予想され、政府債務が民間債務をクラウディング・アウトするのではと心配される。
最近では逆にハイパースケーラー等による債務ファイナンスの急増が、債務市場の需給悪化懸念を呼んでいる。
仮に1社のみで連邦債務の2.1%にあたる莫大な資金を取ってしまうのなら、世界の市場から幅広く調達するにせよ、同業他社の調達、各国政府の調達と合わせて、債務市場を悪化させるだろう。
つまり、世界的に金利上昇圧力が高まるということだ。

AI需要が現在の経済・市場を支える大きな力となっているのは周知の事実。
しかし、そのブームの前提条件には少々非現実的な部分が含まれているのかもしれない。

余談になるが、チャノス氏が次にツイートしたのがNASDAQ上場の某マレーシア企業のニュースだった。
マレーシア国内において3年で計50百万ドルのデータセンターのメンテナンス契約を獲得したのだという。
この会社、株価もチャートも業績も目覚ましい(皮肉です)ものがある。
業種は中華レストランチェーンである。

最近、筆者の周囲で「香ばしい」という形容詞がよく聞かれるようになった。
多くの人が既視感を感じる機会が増えているのだろう。

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