最近AIが企業の業務(例えばソフト開発)や雇用を奪うのではないかとの心配が市場や社会を揺らしている。
ロバート・シラー教授は行動経済学者として極めて早い時期からイノベーションが社会や市場に与える脅威について様々な角度から論じてきた。
革新的的技術が既存の仕事を奪うのは、何もAIに始まったことではない。
過去10年ほどさかのぼり、教授の発言を紹介しよう。
(大統領の任期、教授の出版との関係で、特に2016-19年にメディアへの露出が増えていた時期の発言。)
数字だけでなく、新聞、雑誌、書籍、日誌、講話なども重視するシラー教授は、現在の状況を少し前から予見していたようだ。
2019年 ブラック・サースデイ前後の「テクノロジー失業」
1929年10月の大暴落について語る中で、ありうる原因の1つに言及した:
「人々が『テクノロジー失業』と呼ぶ、機械が雇用を置き換えるというナラティブだ。
このナラティブは、ロボットが人々の職をかつてない速さで奪っているというものだ。
このナラティブは1929年より前に発生し、失業率の上昇とともに増幅した。」
この知見に基づいて、2019年当時に起こりうるAIナラティブを心配した:
「私は、人工知能(AI)がみんなの仕事を置き換えるというナラティブについて心配している。
AIが人々の生活や将来の雇用にどのような効果を及ぼすか予見するのは不可能だ。
しかし、AIや機械学習まわりのナラティブは、経済的ブームや崩壊をもたらし公共政策を動かす可能性がある。」
なぜ当時はこの心配が大きくなかったかについては:
「おそらく、米国が世界のコンピューター科学の中心で、ここで起こるイノベーションの栄光の恩恵に浴しているからだろう。・・・
米国でも、特にもしも本当に印象的なAIが新たに出現したり、失業率が上昇を始めれば、定着する可能性がある。
もしも流行すれば、そのナラティブが不動産や株式の市場のような投機市場に影響を及ぼすだろう。」
ちなみに、1929年より前から始まった「テクノロジー失業」ナラティブは、1930年代に入っても続いたという。
「あなたが信じるかどうかわからないが、当時の人々は極度にロボットを恐れていた。
彼らは自動化という言葉を使わず《技術による失業》という言葉を好んで用いた。
機械が雇用を奪ってしまう。
彼らは、それこそ高い失業率の原因であり、大恐慌とは機械が雇用を奪った結果であると考えた。」
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