ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏は、現在世界が既存秩序崩壊の瀬戸際にあるとし、展開次第で大きく異なる結果になりうると予想している。
「この本の読者にとっては、現在が大きなサイクルの第5段階(既存秩序の崩壊前)から第6段階(既存秩序の崩壊)への瀬戸際であることは明らかだろう。」
ダリオ氏が自身のSNSで、最近の国内外での出来事に対する自身の解釈を述べている。
「この本」とは、同氏の2021年の著書『Principles for Dealing with the Changing World Order』(英語・日本語)を指したものだ。
第5段階とは「方や内戦/革命、方や平和的・理想的で繫栄した共存に至る分岐点」として定義されている。
よくない方、つまり第6段階に進む場合とは「不一致を解決するシステムが機能しなくなる時」に起こるのだという。
つまり、分断の深刻化であり、今多くの人がひしひしと感じているところだろう。
ダリオ氏は著書から引用する形で、この第5段階の特徴をいくつか挙げている。
例えば「悪魔化」(demonization)だ。
自身と異なる状況・立場の人たちを悪魔のように扱い、スケープゴートにするという。
なるほど、ネットにはこうしたことが大好きな人であふれているように思える。
経済面で言えば、何と言っても財政悪化がその特徴だ。
政府が借金を増やし、それが既存の財政システムの持続性を揺るがすようになる。
(持続性が危ぶまれるようになるからこそ、分岐点になる。)
ダリオ氏は、これに対し次のような処方箋を書いている:
成功にとって重要なことは、債務と貨幣が、単に生産性や所得の上昇なしにバラまかれるのでなく、生産性上昇や好ましい投資リターンのために発行され用いられることだ。
こうした上昇なしにバラまかれるなら、貨幣は減価し、政府他に多くの購買力を残すことがなくなってしまう。
たとえ時間がかかっても、将来に実りを生むことに財政資金を使うべきとの提案である。
ダリオ氏は、より具体的に教育・インフラへの投資の重要性を挙げている。
これら投資の質の悪化こそが、過去の歴史において帝国衰退の要因になってきたと書いている。
ダリオ氏は進むべき道を示してはいるが、楽観視しているわけではない。
財政悪化へ過去どう対処してきたか、財政に余力のある政府、ない政府ごとに分けて書いている:
- 貨幣増発が可能:(楽なゆえに)貨幣発行が選択される。結果、投資家の保有資産の価値が減価する。
- 貨幣発行が不可能: 増税・歳出削減しかなくなる。結果、持てる層が国を出ていき、空洞化が起こる。
すでに起こり始めていることだ。
貨幣の価値の毀損は投資家にとって重大な問題だし、富裕層でなくとも外国投資がさかんになっている。
富裕層が国や州の境を超えて移転する話もよく聞かれるようになった。
近時の長期金利上昇は、まだ致命的とは言わないまでも、国家の貨幣発行(ここでの貨幣には政府債務も含む)の余力が減じてきていることを暗示している。
インフレ・通貨安を起こさない形での貨幣発行が米国でも日本でも少し窮屈になっているようだ。
仮にそうだとすれば、先進国であっても上記の場合分けの《貨幣発行が不可能》の方に当てはまってしまうことになる。
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