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【短信】インフレ期待が定着しつつある:ラグラム・ラジャン

IMFチーフエコノミスト、インド中銀総裁を歴任したラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、日銀の置かれた板挟みの状況を解説している。


「みんな米国を見て政府のFRBへの圧力が金利に影響していると言うが、同様に重要なのが日本政府の日銀への圧力だ。
実際の圧力であれ、圧力に見えるものであれ、それが日銀の利上げを阻んできた。」

ラジャン教授が印ET Nowで、日米の中央銀行が政府から受ける圧力について言及した。
(教授自身がインド中銀総裁時代に経験したことでもある。)
ラジャン教授は、ようやく日銀が利上げを再開したと述べたものの、日銀が「インフレ退治のために何でもする」と言わなかったために、利上げ継続に対しては懐疑論も存在すると紹介している。

実は、このくだり「円キャリートレードによって支えられてきた世界の流動性に対するリスク」を尋ねられたことへの回答の一部である。
インドでも、日銀の利上げが世界の流動性を収縮させるのではないかとの懸念が語られているようだ。

もっとも、ラジャン教授は、それが直接的に世界経済に及ぼす影響より、日本自体に及ぼす影響の方を心配している。
教授は、日米が高インフレを続けていることから、インフレ期待が定着する「危険」があると指摘する。

そうなれば、それと戦うのにはるかに高い実質金利が必要になってくる。
大きな問題なのは、日本がとても大きな政府債務を抱え、しばしば他国の問題の前兆となる点だ。
インフレ抑制に必要な高い実質金利は債務負担をさらに大きくする。

ラジャン教授は、インフレと政府債務の板挟みになっている日銀の状況を「金利を低くしつつ、インフレが去るのを願っている」と表現している。
そして、日本の先行きについて率直に予見できないと話している。

「日本は、ミセス・ワタナベが海外からお金を引き上げることで、債務のファイナンスがしやすくなるかもしれない。
それは同時に円高を受け入れることを意味し、企業にはやや痛手になる。
でも、グローバルなサプライチェーンの世界では概して為替レートは思うほどには影響を及ぼさないものだ。」

短期金利はともかく、最近の長期金利上昇は(異常なレベルではないにせよ)国内投資家の国債離れの1つの表れだろう。
利上げ継続で円キャリーがいくらか巻き戻すなら、そのお金が再び日本国債に戻って来るかもしれない。
ラジャン教授が言うように、円高でも貿易収支がさほど影響を受けないなら、利上げ継続の方がよいようにも見える。
実際、現在の円安水準ならば、企業は多少の円高を「痛手」とは感じないだろう。

もっとも、政府の金融緩和へのこだわりは変わりそうにない。
政府は本音ではインフレ退治を望んでいないのだろう。
金利は低く、インフレは高止まりさせ、金融抑圧の状態を続けさせることで、政府債務の実質負担を減らそうと考えているのだろう。


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