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ジェレミー・シーゲル教授が接続詞「しかし」を使う本当のワケ

ジェレミー・シーゲル教授の話しぶりをつぶさに観察すると、教授の脳裏にある心配事が垣間見える。


「興味深いのは、米市場がローテーションしつつあるのか?ということ。
NASDAQは史上最高値ではない。
オラクルやブロードコムで起こったことを見ると(AI銘柄に対する)ハードルは相当に高い。
驚いたが、転換点なのかもしれない。
みんな(上昇銘柄の)拡大と話しているが(ローテーションが)本当に起こっているのかもしれない。」

シーゲル教授がウィズダムツリーのポッドキャストで、米市場でついにローテーションが始まった可能性を指摘した。
これまでも短期的にはテックやグロースから小型株やバリューへのローテーションに見える局面があった。
しかし、いずれの場合もそれは一時的なフェイントに過ぎなかった。
今回教授は、ついに本当にローテーションが起こる可能性が高いのではないかと考えているようだ。

ただし、このローテーションについて、シーゲル教授はすべて前向きな話とは捉えていない節がある。
オラクルは10日の業績発表でAI投資の増額や収益化の後倒しを発表し、株が売られた。
ブロードコム株は11日の業績発表でAI関連売上高が市場予想に届かず、株が売られた。
教授は依然として米市場に強気だが、その語り口にはあまり説得力がない。

「AIへの過剰投資についてはいくらか本当に懸念があり、その議論は定着しつつある。
これは市場の幅の広がりにはよいことだ。・・・
これら(AI)銘柄が崩壊するとは言わないが、注意する必要がある。」

AI株への不安が市場の広がりやローテーションの一因となっているのはそのとおりだろうが、それを前向きな変化と捉えるべきだろうか。
米経済や市場は大いにAIというテーマの恩恵を受けてきたはずだ。

シーゲル教授は今後の波乱要因をいくつか指摘している:

  • 裁判所のトランプ関税への裁定
  • 医療改革の紛糾による政府閉鎖の可能性

それでも、シーゲル教授の結論は強気だ。

実際、現在の米市場は弱気になるのが難しい状況にある。
冷静に1つ1つの要因を検証していくと、どうしても強気の結論とならざるをえない。
雇用に心配はあるものの経済は堅調で、政府や中央銀行の政策もプロビジネスなままだ。

最後にシーゲル教授の発言を2か所紹介しよう。

「たくさんの不確実性はあるものの、先行きを見る限り企業利益やGDPほかすべての予想において何も心配なことはない。
現在ローテーションが見受けられる。
しかし、市場にのしかかるものは何も見られない。」

「現在ローテーションが起こっているように見える。
しかし、基本的な強気相場は今月末から1月にかけて強いように見える。」

現在は強気相場が長く続いてきて、FRBが利下げし、ローテーションが始まりそうな状況にある。
冷静に考えれば、これは景気・市場サイクルが1段階進んだことも暗示している。
だからこそ、シーゲル教授は、ローテーションと強気の間を「しかし」という接続詞でつないでいるのであろう。
今回の利下げサイクルは(1990年代後半と同様に例外的に)弱気相場をスキップするのかどうか、そこに注目が集まるのだろう。


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