ブリッジウォーター・アソシエイツのグレッグ・ジェンセン氏が、投資について幅広いテーマを語っているが、濃淡の《淡》の方が印象的だった。
「ほとんどの人たちは、15年間有効でなかったため、分散からかけ離れた状態だ。
必要なのは米国株だけで、より流動性の高いものがよいとされてきて、信じられないほどうまくいった。
これはほとんど落とし穴だ。」
ジェンセン氏がNorges Bank Investment Management(ノルウェー中銀系運用会社)のインタビューで語った。
今後は誰が勝者で誰が敗者になるかの予想が難しく、米国も急激に変化しているとして、世界の地域に分散したポートフォリオを持つことを奨めている。
ブリッジウォーターが分散を推奨することに違和感はない。
まさに絶妙の分散で世界一になったヘッジファンドだ。
このインタビューでは広く社会・経済・市場の変化が語られ、中でもAIについての前向きな話題が多くなっている。
一方で、印象的だったのは、あまり語られなかった資産クラスについてのコメントだった。
最も短い回答となったのは不動産についてだった。
「私には十分な知識がない。」
共同CIOが《知らない》と答えるにはそれなりの意味があるのだろう。
高度な分散投資で成功を収めてきたブリッジウォーターでは、不動産という資産クラスは驚くほどプレゼンスがないのだろう。
コモディティに積極的な姿勢とは対照的だ。
不動産についてはインフレヘッジに役立つという意見もあるが、一方で、金融引き締めのある経済では金利への感応度も問題になることが背景にあるのかもしれない。
(インフレで不動産の名目価格は上昇しうるが、インフレが金融引き締めにつながる場合、それが不動産価格にネガティブに働きうる。)
この資産クラスはあまり分散には役に立たないと見切っているように見受けられる。
もう1つ、あまり関心を示さなかったのが暗号資産だった。
「暗号資産について研究し始めたのはAIと同じく2012、2013、2014年だが、考えはあまり変わっていない。
これはあまり有用な技術ではない。」
完全なダメ出しでもないのだが極めて消極的なトーンで、師匠のレイ・ダリオ氏よりはるかに後ろ向きと感じさせる話しぶりだった。
