ケン・フィッシャー氏が、投資家の陥りがちな誤りについて語り、パッシブ投資の落とし穴を説明した。
その1つは、伝統的な投資の知恵が正しいと信じることだ。
伝統的な投資の知恵には数多くの誤りがある。
市場とは、伝統的な知恵を含めてみんなが知っていることを現在の証券(価格)に織り込む上で相当に効率的であるからだ。
フィッシャー氏が自社ポッドキャストで、投資家が避けるべき一般的な誤りをいくつか挙げている。
その1つ目が、投資の世界で半ば常識と考えられていることでも実は正しくないことが多いというもの。
同氏は誤信されていることの例として投資家の知能について触れている。
「例えば、勝つためにはより賢くなければいけないということ。
誰より賢くなければいけないの?
実際には、市場は本当に相当に賢い。」
いわば、市場とは無数の投資家の集合知のような存在。
「伝統的な知恵」などとうに市場には織り込まれているし、個々の投資家が集合知を上回ることは相当に難しいのかもしれない。
フィッシャー氏は、優れた投資家の実像を次のように語っている。
「市場における最良のプレーヤーはそんなにIQが高いわけじゃない。
ウォーレン・バフェットが言ったように『IQより気性の方が重要だ。』」
並みの投資家にとって、一筋の光が差すような発言だ。
では、バフェット氏の言う「気性」とはどのような気性を指しているのか。
フィッシャー氏は、投資において最重要な点として自己の理解と自己制御を挙げている。
「このゲームは他の人たちを打ち負かすことではなく、自分の間違いを最小にすることにある。
間違いを最小にできれば、他の人たちよりよい結果を生むことができる。」
著書『敗者のゲーム』で有名なチャールズ・エリスは「プロは得点を勝ち取るのに対し、アマはミスによって得点を失う」と書いた。
フィッシャー氏は、市場がかなり効率的だと考えているため、プロであってもファインプレーで勝つのは難しく、ミスをなくすことを重視すべきと考えているようだ。
市場が相当に効率的だと信じるなら、投資家はアルファなど狙わずパッシブ投資・インデックス投資に専念すればよい。
しかし、フィッシャー氏は、パッシブ投資であっても自己制御なくしては正しく行うことが難しいと釘を刺している。
ほとんどの人は実際にはパッシブ投資ができない。
やれると思っているが、本当のところはパッシブ指数を高値で買って安値で売っている。
本当のパッシブ投資は長い長い期間の不動が要求される。
それは、恐怖の時期でも陶酔の時期でも心理的にとても難しい。
相場・環境・感情に左右されインデックスを買ったり売ったりすることは、本来のパッシブ投資のあり方ではなく、単なるマーケット・タイミングにすぎないとの指摘である。
