アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、投資の世界で今年の主役の一角となった金について性格・価格・効果について総括している。
「金は資産ではないが、歴史上の異なる時点、異なる形で通貨、コモディティ、収集品として存在してきた。」
ダモダラン教授が自身のブログで書いている。
教授によれば、金は過去「非効率な通貨」、コモディティ(ただし収集品としての価値が大きい)、「卓越した収集品」であったという。
ダモダラン教授は金価格について、金がキャッシュフローを生まないことから割高・割安を議論することはできず、価格は需給によって決まっていると解説している。
貴金属では実用以外の需要が多く「根源的」価値を測るのが困難と指摘している。
その上で、伝統的に金価格に影響を与えてきた要因としてインフレ、危機の恐怖、実質金利の3つを挙げ、いくつか観察結果を紹介している:
- インフレ: 決定係数は19%と低く、1970年代を除外するとさらに低くなる。ヘッジ機能は大幅なインフレ、予想外のインフレにしか機能しない。
- 危機への恐怖: 相関は少ない。債券より株式に対し感度が高い(ヘッジ機能が大きい)。
ダモダラン教授はポートフォリオに金を加える効果について、大部分を金融資産で保有する場合の「極端なイベントに対する保険」の場合に有効と結論している。
教授は、金市場が長い目で見て縮小したり拡大したりを繰り返すニッチ市場だとし、その拡縮を端的に解説する:
「世界が安定しているよい時期には、このニッチの参加者はほぼ全員が熱心な信者になる。
法定通貨はお金ではなく紙切れであって、金融資産市場はインサイダーを金持ちにするために作られていると信じる、陰謀論者と終末カルト信者たちだ。
怖れの多い時期にはこのニッチが拡大し、通常は株式・債券に投資しているものの中央銀行またはバブルに見える市場への不信から金が必要と考える投資家にも拡大する。」
この描写から読み取れるのは、金価格を決めるのが(ファンダメンタルズのある金融資産と比べ)圧倒的に人間の側にあるということだろう。
今回のテーマに対し《バリュエーション学長》の議論の歯切れはあまりよくない。
それもそのはず、バリュエーション(プライシングではない)とはファンダメンタルズに基づく営みだからだ。
ダモダラン教授は金価格について、中央回帰を信じるなら割高だが構造変化が起こった可能性もあると、断言を避けている。
それでも教授は最後に弱いながらも一応のメッセージを書いている。
結局のところ、ジェイミー・ダイモンやレイ・ダリオが市場をバブルだと思うなら、彼らが金を保有するのも理に適っているのではないか?
