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米金融政策の”今回は違う”:レイ・ダリオ

ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、現在の米金融政策の特徴を「バブルへの刺激策」と表現した。


今回の量的緩和(QE)は過去実施された時とはきわめて異なる状況の中で行われている。
今回は不況でなくむしろバブルに入る中での緩和だ。

ダリオ氏が自身のSNSで、FRBの利下げと量的引き締め(QT)停止について、市場へのインプリケーションを解説した。
同氏は、12月からのQT停止が「完全で典型的な刺激策としてのQE」にまで至るかはわからないとしつつも、金融政策全体としては緩和的だと見ている。
仮にQT停止と再投資でバランスシート規模がさほど変わらないとしても、利下げは続くと見られているから、程度はどうあれ妥当な見方なのだろう。

ダリオ氏は従前から独自の指標を設けて市場のバブル度を定量的・定性的に評価してきた。
その中で、市場全体についてはバブルという結論を避けることが多かった。
ところが、先月末には、米市場が《ITバブル》や《狂騒の20年代》を再現しうるとの見方を表明している。
今回のSNS記事でも、自身の指標に基づくと「AI株はバブルにある」と明言している。

AI株がバブルか否かは、もっぱらバブルという言葉の定義の問題だろう。
ダリオ氏はこのことを理解しているから《自身の指標に基づくと》と断りを入れたのだ。
この定義の問題を別とすれば、ほとんどの人がAI株について少なくとも《持続不可能な部分を含んでいる》と疑っている。
次の素朴な疑問は、市場全体がバブルになりうるのか、であろう。
つまり、市場の行方が、2000年のITバブル崩壊のように特定のセクターやテーマに限定される傾向の強いものですむのか、それ以外の部分の連れ安は軽微ですむのか、であろう。

ダリオ氏がQEについて言及した「異なる状況」とはどういうことか:

過去 今回
資産価格 下落し、割安、または割高でなかった 高く、上昇中
経済 収縮、またはとても弱い 比較的強い
インフレ 低い、または下落 インフレ目標より高い
債務・流動性 問題大きく、信用スプレッド大 豊富で信用スプレッドは歴史的小ささ

ダリオ氏の現時点での一応の結論はこうだ:

つまり、現在QEとなれば、『不況に向かう中での刺激策』ではなく『バブルへの刺激策』となる。


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