ショートセラー ジム・チャノス氏が、過熱感が心配されるAI関連投資について問題の本質を語っている。
AI分野での過剰投資への心配の声が高まる中「どうやってヘッジすればよいか」Bloombergで尋ねられ、チャノス氏はため息をついた。
市場が大きくAIに依存しており「逃げ場がない」点を説明した上で、こう結論した:
「だから(AI投資が)うまく行くことを願う方がいい。
もしもそうならなければ、失望が待っている。」
チャノス氏はこれまで、技術革新への大型投資が目先の企業利益を見かけ上押し上げる傾向を指摘してきた。
さらに、その投資・売買がベンダー・ファイナンスで行われる例が増えるにつけ、2000年までのITバブルに似てきたと警告を発してきた。
しかも、現在語られている数字はITバブル時とは比べものにならないほと大型化している。
「2000-2001年の問題は基本的にはベンダー・ファイナンスではなかった。
先述のとおり、その額は5年で1千億ドルほどに過ぎなかった。
本当の問題は、2倍、3倍の設備発注だった。・・・
2000年終盤から2001年初めにかけて、突如としてキャンセルされた。・・・
S&P 500の利益はピークから底までで40%低下し、同指数も約40%下落した。」
チャノス氏は、ITバブル後の景気後退が「マイルド」なものだったと回顧する。
ITバブル崩壊は関連銘柄の投資家に襲い掛かった災難に過ぎなかった。
問題は「ドーピングされていた企業利益」だったという。
同氏は今回もAI関連企業の受注金額・残高を注視すべきと話した。
チャノス氏の心配は米企業の利益の質に向かっている。
もしもこの心配が現実のものとなれば、これまでむしろ安心材料とされてきた米国株のバリュエーションの議論は無意味なものになってしまう。
EPS×PERで見てPERはさほど高くないと議論してきたものの、EPSの方が下駄を履いていたことになるからだ。
最近の高いシラーCAPEレシオはその可能性を示唆しているように思われる。
チャノス氏は問題の本質に斬りこむ。
それはAI事業の収益性、それを実現する事業モデルだ。
「OpenAIは、そのAIのプロンプトの70%、2/3ほどから今年130億ドル、来年300億ドルの収入を見込んでいるが、設備投資は数千億ドル必要だ。
いつか誰かが、債務返済できるキャッシュフローと利益に直接つながる事業モデルを確立しなければいけない。」
チャノス氏が言いたいのは、AIインフラだけでなく、投資に見合う収益性を有するアプリケーションが必要ということだ。
AIが本当に革命的なら、おそらくそうだろうが、ハイパースケーラーやOpenAIから収益化が可能な本当に面白いアプリケーションが出て来るはずだ。
それなのに多くの投資家は基本的に道具、データセンターや設備に投資している。
そういうものは最終的にはコモディティ・ビジネスになってしまうだろう。