《テンバガー》という言葉でも有名な伝説的投資家ピーター・リンチ氏が、一般投資家の陥りやすい落とし穴についていくつか戒めている。
インタビュワー:
「あなたは『株式で儲けるのに本当に重要なのは、恐れのために売ってしまわないことだ』と言った。
どうしてそれが株で儲けるカギなのか?」
リンチ氏:
「もっと重要なのは『自分の持っている株を知ること』という表現だ。」
リンチ氏がThe Compoundのインタビューで、投資家にとって有用ないくつもの考え方を話している。
同氏によれば、多くの投資家が投資対象についてほとんど何も知らないまま投資を行っているという。
もしも、投資対象について調べないなら、その投資家は何らかのファンドを買うべきだという。
みんなとても用心深い。
50ドル安い航空券を買うのに数時間をかけ、すべてをチェックする。
それでいて、バスで耳にしたばかげた銘柄に1万ドル投資している。
何をやっているかまるで理解していない。
リンチ氏は特に、投資家が投資している銘柄について理解していなければ、大きな株価下落時にどうしてよいかわからなくなると指摘する。
ターン・アラウンド(悪化からの回復)は同氏にとって有用な投資パターンの1つ。
内容を理解していなければ、大きな下落の時、継続保有とすべきか離れるべきか判断がつかない。
リンチ氏は、学生に話をする時には、仮想のポートフォリオを作って投資の練習をすることを奨めているという。
「10銘柄を選び、1-2年観察し、買った理由の一覧を作っておき、実際にどうなったかを見直す」ことを推奨している。
投資対象を知り、投資する理由を明確にし、適切な投資判断を下すよう、習慣づけをするためだ。
そして、個別銘柄への投資では、やはり努力も必要だ。
「一番多く岩をひっくり返してみた者がゲームで勝利する」とも語っている。
リンチ氏は、個別銘柄であれ市場全体であれ「市場で遊ぶ(play)べきでない」と戒める。
将来を予見するのは難しく、エコノミスト予想の精度を「過去11回の景気後退について33回も予想した」と腐している。
マクロ経済だけでなく投資においても同様であり、「市場の調整自体で失われるより、調整に備えたり調整を予想しようとすることで失われるお金の方が大きい」と述べたこともある。
将来を予見することは難しいと達観する一方、現状のファクトについては十分に注視しているという。
インタビュワーはインタビューの中盤、冒頭で紹介した質問に立ち返っている。
焦って売らないことが重要との考え方だ。
これは、ウォーレン・バフェット氏に引用されたリンチ氏の有名な言葉についての質問だった。
『勝ち銘柄を売って負け銘柄を持ち続けるのは、花を摘んでしまい雑草に水をやり続けるようなものだ。』
投資先をよく知り、投資の理由を明確にしてあれば、少々上がったからといって安易に利益確定の売りを行うこともなくなる。
すばらしい銘柄はすばらしい限り持ち続けることができる。
リンチ氏は先述の通り、投資には確率現象の要素があることも心得ている。
「勝ち銘柄で(負け銘柄の)失敗をオフセットしないといけない」とも付け加えている。