アリアンツ主席経済顧問モハメド・エラリアン氏が、米経済・市場のリスク要因を説明し、市場の反応の分断を指摘した。
「輸出企業・輸入企業・消費者がいて、これまでもっとも(関税の)負担をしていないのが消費者だ。」
エラリアン氏がCNBCで、今後本格的に顕在化していく関税の負担を誰が負担するか解説した。
企業は、需要の価格弾力性を分析した上で、特に低所得者層の消費者について価格転嫁ができないと判断しているという。
消費者はコロナ後のインフレですでに疲弊しているためだ。
結果、関税の負担は輸出企業・輸入企業が多く背負うこととなり、これら企業で利ザヤの圧縮が懸念されるという。
10日発表の米PPIは、市場予想が前月比0.3%上昇だったのに対し、0.1%の低下となった。
7月の速報値0.9%上昇も0.7%上昇に下方修正された。
(8月の前年同月比では、市場予想3.3%上昇に対し2.6%上昇にとどまった。)
9日に発表された3月までの1年間の米雇用者数の下方修正(年911千人、月あたり76千人)と合わせ、米雇用の悪化、インフレ率の低下を印象付ける結果となった。
PPIの低下を受け、トランプ大統領は「インフレはない」と断言し、FRBへの利下げ圧力を強めている。
エラリアン氏は今月16-17日のFOMCに注文を付けている。
「もしもFRBが本当にデータ次第ならば、どうして50 bp(の利下げを)やらないかという問いになる。」
雇用が悪化しインフレ率が低下傾向にあるとする一方で、米景気や企業利益は堅調とされ米国株は最高値圏にある。
これら両方の命題は必ずしも相反するものではない。
1990年代から見られた労働分配率の低下を思い出せば、労働者が苦戦してもマクロ経済や株式が上昇することはありうることだ。
ただし、エラリアン氏の言によれば、米消費者でさえさほどの傷を負っていないことになる。
やはりどこかに過度な楽観が潜んでいるのではないかと疑るのは、決して間違った考え方ではあるまい。
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