ローレンス・サマーズ元財務長官が、トランプ政権による意見の異なる人たちへの排斥を礼儀正しく丁寧に非難している。
「インフレと雇用についての相対的な確率や危険について、私はまだ不可知論的な立場をとっている。」
サマーズ氏がYahoo Financeで、金融政策の2つの使命、インフレと雇用について予見が難しいとの考えを示した。
その上で、すでに数年2%インフレから遠ざかっていること、関税の影響がまだ現れていないこと、政治によるFRBへのプレッシャーが強まっていることを理由に挙げ、物価安定についての心配にやや重点を置くべきと話している。
将来の予見が難しく、スタグフレーションの懸念もあることから、FRBにはデータ次第のスタンスを継続してほしいと述べている。
サマーズ氏は、仮にトランプ関税がなかったなら、AI化などによりディスインフレとなる可能性が高いと言う。
しかし、関税をはじめインフレ要因がいくつかあることからインフレ予想が難しいとし、中期的には2%物価目標が実現できないリスクがあると指摘した。
そうなった場合、FRBの信認喪失の他、深刻な問題を引き起こすと心配している。
投票行動や調査から明らかなのは、経済学者がどう考えようと、アメリカ人は大きなインフレを嫌い、インフレの蓄積による高い物価を嫌うということだ。
トランプ政権は、手段を択ばず、彼らが敵とみなす個人・組織を攻撃し、退任を迫っている。
また、ワシントンへの州兵派遣を皮切りに「治安対策」と称して必要に応じいつでも全米に州兵を派遣できる大統領令にも署名している。
もちろん、軍派遣の是非を決めるのは政権側であり、民主党地盤への派遣を想定していると報じられている。
さながら専制国家への変身を図っているようにも見える。
サマーズ氏は政権による個人へのプレッシャーについてコメントを求められると、前例を無視しルールを変えてでも意見の異なる人を追い詰める行為が、長い目で見て「米国のアルゼンチン化」を引き起こしかねないと答えている。
(「アルゼンチン化」とは、長期的な高インフレ・通貨下落・政治混乱などを指したものだろう。)
同氏は、こうしたやり方に対し懸念を表明する人が多くない点について「失望している」と話している。