元IMFチーフエコノミスト ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、世界で加速する脱ドル化の時間軸と進み方についてイメージを語っている。
今後数十年で人民元が米ドルに置き換わるという話ではない。
率直に言って、今世紀いっぱいでもそれは起こらないかもしれないし、起こるかもしれない。
ロゴフ教授が米商工会議所のインタビューで、米ドルの基軸通貨としての地位についてコメントした。
教授は、ドルやドル資産への長期投資家がすぐさま「完全にドル離れを進めることは不可能」と指摘しつつも、ドル離れが加速していると危機感を示した。
予想されるのは、世界の地域ごとに進む変化だ。
「地域的には間違いなくドルに置き換わるものが出て来る。
ユーロがそうで、ドル離れの恩恵を受けている。・・・
ユーロの準備通貨としての役割は大きくなっていくだろう。」
ロゴフ教授は、ユーロのプレゼンス向上には地政学的重要性も必要だと指摘する。
欧州が財政支出、さらに再軍備、軍事面での統一を強めることでユーロが強くなるという。
では、もう1つの候補、人民元はどうか。
「いずれにせよそうなるとは思うが、中国外為市場は完全に自由化しなければいけないわけではない。
みんな中国の資本市場も完全に開放しなければいけないと言うが、そうではない。
誰でも中国国債を買えるようにしないといけないが、すべての中国企業に投資できるようにする必要はない。
・・・中国の当面の目標はラテンアメリカやアジアで通用する地域通貨だ。」
ロゴフ教授は、中国のこうした戦略が結果的に人民元の通用する地域を拡大していくことになると予想する。
ロゴフ教授は、暗号資産については否定的だ。
暗号資産は地下経済では大きな存在になっているものの、合法経済は別の話だという。
教授は、表の世界ではステープルコインが選択されると予想している。
そもそも脱ドル化の加速の話題は、拡張的政策を望む政治やFRBの独立性が脅かされている点から注目を集めている。
ロゴフ教授は、こうした風潮を冷静に分析する。
「ある面で私たちはインフレ低下の時代に生きていて、もう独立した中央銀行は要らないという考えに傾いている。
やっていることに気づくには、頭から冷水を浴びせられる必要があるのだろう。」
最後に今一番の心配事を尋ねられると、これまた冷静かつ淡々と答えている。
今後4-5年で再びインフレの暴発が起こるだろう。
米財政政策は制御不能で、FRBの独立性が試されており、前に進むには大きなショックが必要かもしれない。
バイデン政権下で大幅なインフレのショックが起こったが、似たようなことが起こっても私は驚かない。