アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、少し前までブームと言ってよかったオルタナティブ投資のセールストークについて検証している。
ダモダラン先生の毒舌が今日も冴えわたっている。
すばらしいメッセージなので、それだけでも読んでおくとよい。
トレンドラインを見ると明らかに、オルタナティブ投資の売り手と買い手の両方について簡単に儲かる時代が終わりつつある。・・・
今やオルタナティブ投資販売のターゲットは個人になったようだ。
すべての投資に言えることだが、買い手には注意を求めたい。
ダモダラン教授は自身のブログでこう結論づけている。
オルタナティブと言っても種類は様々だから、個別の資産について濃淡があるのだが、概して慎重に当たれとのアドバイスだ。
(最後に留意点を列挙している。)
教授が検証しているのは主に次の2つのセールストーク: 他の資産クラスとの相関の低さ、アルファの獲得である。
- 相関の低さ: ポートフォリオの分散に寄与するとの売り文句。
ダモダラン教授は理論的に正しいと認めている。ただし、ここで議論しているリスクとはシャープレシオなどで勘案されているシグマ、ボラティリティである。 - アルファの獲得: 非効率な市場、優れた運用者によりαが獲得できるとの売り文句。
ダモダラン教授のヘッジファンド、プライベートエクイティ(PE)、ベンチャーキャピタル(VC)についての結論は、若干のαが認められるが、それが主張された理由に対する報酬か否かはわからないというもの。
こう紹介した上で、ダモダラン教授は、前提に潜む課題も指摘している。
- 価格: (PEやVCで)十分にマークツーマーケットが行われているとは言えず、価格データの信頼性に疑問がある。
- 市場危機: 危機時には平時の相関関係が崩れ、多くの資産クラス間の相関が高まり、揃って下落しがち。
- 流動性の低さ: 将来の資金需要が読める投資家に適しているが、そういう投資家でも計画に変更を迫られることがある。
- 透明性の低さ: よい時は気にかけられないが、悪い時には問題になることがある(おそらく不祥事・不正を指すものだろう)。
- アルファの低減: 競合が高まり、優位性の維持が難しくなり、αが低減する傾向にある。
- コスト: 運用者のいる資産クラスではコストが高い。
(次ページ: 流動性の低さに喘ぐ投資家)